市河氏(読み)いちかわうじ

改訂新版 世界大百科事典 「市河氏」の意味・わかりやすい解説

市河氏 (いちかわうじ)

甲斐国市川郷より起こるという。鎌倉初期より市河行房・行重らの活動が《吾妻鏡》に見え,このころ信濃国へ移ったらしい。承久の乱では市河六郎刑部が幕軍として奮戦し感状を受けた。中野氏との婚姻により1274年(文永11)市河盛房の所領として信濃国高井郡志久見山地頭職等が認められ,以後市河氏は中野氏を抑え志久見郷(現,長野県下水内郡栄村)に栄えた。南北朝期には北朝に属し,1337年(延元2・建武4)市河親宗は越前金ヶ崎の新田義貞軍を攻撃,また市河氏と境を接する越後魚沼の新田一族とは志久見川岸で激戦を重ね,41年(興国2・暦応4)市河倫房は越後新田氏の本拠地赤沢の館を焼き払った。室町時代,市河氏は高井郡北部の領主として発展。戦国時代後期には武田氏に属して市河信房が上杉氏と戦いを繰り返すが,武田氏滅亡後,いったん織田氏に属すも信長の死により上杉景勝を主とした。1598年(慶長3)市河勝房は上杉氏の会津転封に従い鎌倉以来の地を去った。
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百科事典マイペディア 「市河氏」の意味・わかりやすい解説

市河氏【いちかわうじ】

信濃(しなの)国高井郡を本拠とした武家。同じく鎌倉幕府御家人として高井郡に勢力を張った中野氏を抑え,戦国時代にかけて郡北の領主として栄えた。《市河文書》(山形県本間美術館蔵,重要文化財)は平安末期から戦国期に至るこの地方の領有関係や武士動向を知る最もまとまった史料

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