希ガス(読み)キガス(英語表記)rare gas

翻訳|rare gas

デジタル大辞泉 「希ガス」の意味・読み・例文・類語

き‐ガス【希ガス/×稀ガス】

希ガス元素」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「希ガス」の意味・わかりやすい解説

希ガス (きガス)
rare gas

周期表第0族に属するヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンArクリプトンKr,キセノンXe,ラドンRnの6元素の総称。すべて空気中には微量にしか含まれていず(約0.94体積%,大部分はアルゴン),地球上の存在量がわずかであることから希産のガスという意味でこのように呼ばれる。またヘリウムはα崩壊の生成物として,ラドンは放射性系列に属する放射性元素として,ともに放射性鉱物鉱泉などの中に含まれる。ヘリウムはアメリカの天然炭化水素ガス中に多く含まれ,7~8%に達することもある。いずれも無色,無臭,無味の気体であるが,物理的性質は原子番号とともに規則的に変化する(表参照)。いずれも単原子分子からなり,原子間の相互作用が低いため,融点,沸点が低い。これは,原子の電子配置が,最外殻でs2p6(ヘリウムのみはs2)となり,閉殻をつくり安全な配置をとるためであり,またイオン化ポテンシャルが高く,化学的に不活性な原因となっている。このため,不活性気体(不活性ガス)inert gasあるいは貴ガスnoble gasということもある。いずれの元素も真の意味での化合物をつくることはないと考えられていたが,イオン化ポテンシャルの最も低いキセノンについて1962年カナダのバートレットN.BartlettによってはじめてXePtF6がつくられ,それ以来今日までにXeおよびKrの化合物がつくられている。
希ガス化合物
執筆者:

235Uなどの核分裂または中性子捕獲によって生成される放射性同位体で,37Ar,41Ar,79Kr,81mKr,85mKr,85Kr,87Kr,88Kr,133mXe,133Xe,135mXe,135Xe,138Xeがある。KrおよびXeの放射性同位体は原子炉燃料棒中で,Arの放射性同位体は炉内の空気中Arの放射化で生じ,半減期10.7年の85Kr以外はいずれも半減期が12日以下と短い。燃料棒より漏出した放射性のKr,XeおよびArは,貯留タンクに蓄えられ,放射能の減衰を待って環境中へ放出される。85Krの大部分は,核燃料再処理工場で燃料棒の切断溶解の際に放出される。放出された85Krは大気とともに地球全域に拡散移行する。このために,1962年ころから大気中の85Kr濃度が増大しはじめたことが世界各地で観測されている。また85Krは,臨床医学で血液還流試験のトレーサーとして用いられるほか,容器に密封して蛍光剤を発光させる夜光標識の線源として用いられている例もある。
執筆者:


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化学辞典 第2版 「希ガス」の解説

希ガス
キガス
rare gas, noble gas

周期表18族に属するヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンAr,クリプトンKr,キセノンXe,ラドンRnの6元素をいう.2006年に3原子の合成が報告された118番元素は希ガスの一員(エカラドン)とされる.空気中に約0.94体積% 含まれ,ほとんどがアルゴンである.ヘリウムとアルゴン以外は存在量が少ない.反応性に乏しいと思われていたため,不活性気体(inert gas)または貴ガス(noble gas)ともよばれる.ヘリウムはアメリカのカンサス,オクラホマ,テキサス州などの天然ガス中に比較的高濃度で含まれている(最高8.9 体積%,通常0.5~2体積%).太陽その他の恒星中で水素についで多く,全宇宙質量の約24% がヘリウムである(水素74%).ラドンは放射性で,ラジウムのα崩壊によって生成するので,ラジウムを含む鉱物中に見いだされる.α粒子は 4He2+ であるから同時にヘリウムも存在する.希ガス元素は常温で無色,無味,無臭の気体.単原子分子で融点,沸点は低い.これらの性質はすべて,その電子配置がns2np6のいわゆる希ガス構造をとっていることによる.希ガスの液体・固体中での凝集はファンデルワールス力によっており,原子内電子数が多くなるほど強いので,原子番号とともに融点,沸点が高くなる.イオン化エネルギーは,原子番号とともに半径が大きく,すなわち核と最外核電子の距離が遠くなり,内殻電子によるしゃへいも効いて,逆に低くなる.軽い希ガス元素は化学的に不活性であるが,クリプトン以下,とくにキセノンからは,フッ素,酸素などと比較的容易に反応する.重い希ガス元素が反応性をもつことは,イオン化エネルギーの低下が最外殻を開きやすくすることと結びつけられる.希ガス化合物としては励起原子,あるいはイオンのつくる短寿命の He2*,He2 など,低温高圧下でつくられる包接化合物,通常の意味の化合物としてクリプトン以下のフッ化物,酸化物,酸化フッ化物などがある.一般に希ガスは拡散力が大きく,ヘリウムはガラスをも透過するので特殊ガラス,またはステンレススチール容器を用いる.希ガスはすべてゴム,プラスチック中を拡散する.分析は質量分析,分光分析,ガスクロマトグラフィーによる.用途は,超伝導核磁気共鳴装置用,そのほかの冷媒(ヘリウム),溶接または高純度金属や半導体,薄型パネル製造の際の不活性雰囲気(ヘリウム,アルゴン),各種電球の充填ガス(アルゴン,クリプトン,キセノン),気体レーザー用ガス(ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン),プラズマディスプレイ用放電ガス(ネオン,キセノン,ヘリウム)などである.高エネルギー物理学用検出装置の媒質にも液化アルゴン,キセノンが使われる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「希ガス」の意味・わかりやすい解説

希ガス【きガス】

通常,周期表第0族の元素ヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンAr,クリプトンKr,キセノンXe,ラドンRnをいう。すべて希元素に属し,しかも常温で気体であるためこのように呼ばれる。いずれも空気中に含まれ,空気を液化分留して得られる(ラドンRnは放射性元素で,ラジウムRaから得られる)。化学的に不活性で,不活性ガスともいい,貴ガスとも書く。
→関連項目ラムゼー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「希ガス」の意味・わかりやすい解説

希ガス
きガス
rare gases; noble gases

不活性ガス,貴ガスともいう。周期表 18族に属するヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンの6元素の総称。ヘリウムは2個,そのほかは8個の価電子をもつ安定な電子配置のため,化学的には非常に不活性で,化合物をつくりにくいが,励起状態では酸化物,フッ化物や塩化物などの化合物をつくるものがある。単体は単原子気体で,分子間力が小さいため,いずれも沸点が低く,特にヘリウムは-269℃という最低の沸点をもつ。空気中には微量 (約 0.94容量%) 含まれるが,大部分はアルゴンである。ラドンは天然放射性系列に属する元素として,またヘリウムはα壊変の際の生成物として,ともに放射性鉱物,鉱泉などに含まれることがある。

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知恵蔵 「希ガス」の解説

希ガス

「気がする」の意味。「希ガスる」の誤変換の面白さから電子掲示板上などで広まり、「る」がとれて定着した。本来は化学用語であり、ヘリウム、ネオンなどの気体(ガス)、第18族元素群のこと。

(川口正貴 ライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

栄養・生化学辞典 「希ガス」の解説

希ガス

 18族(旧VIII族,0族)の元素,すなわちヘリウム,ネオン,クリプトン,キセノン,ラドンの総称.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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