希望・冀望(読み)きぼう

精選版 日本国語大辞典 「希望・冀望」の意味・読み・例文・類語

き‐ぼう ‥バウ【希望・冀望】

〘名〙
① (━する) こいねがうこと。あることが実現することを待ち望むこと。また、その気持。のぞみ。願望。
※新聞雑誌‐三〇号・明治五年(1872)二月「方今政府と国人の冀望(キボウ)する所は」 〔後漢書‐安帝紀〕
② 将来への明るい見通し。のぞみ。可能性。見込み
※暴夜物語(1875)〈永峰秀樹訳〉二「尚ほ一点の冀望なきにあらざれば、僅かに慰むる所ありて」
※鮫(1937)〈金子光晴〉鮫「あれさびた眺望希望のない水のうへを、灼熱苦難
[語誌](1)現在漢音でキボウと読んでいる「希望」は古くは呉音読みでケモウであった。院政期頃の辞書である「色葉字類抄」、中世後期から近世前期にかけての古辞書類も「ケマウ」であり、近世中期以降の早引節用集類も同様で、近世末期頃まではケモウが一般的であった。
(2)明治初期に出版された節用集には「けまう」と「きばう」の両者があり、ヘボンの「改正増補和英語林集成」(明治一九年)には「キボウ」しかなく、また「言海」(同二四年)も「きばう」だけである。従って、明治二〇年頃にはキボウの方が一般的になっていたと思われる。
(3)表記としては、「希望」の他に明治初期には同義の「冀望」も見られる。「冀望」は中国出典が求められる語であり、「冀」にはキの音しかないところから、「希望」をキボウと読むようになったことによって代用されたものか。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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