帝紀(読み)ていき

精選版 日本国語大辞典 「帝紀」の意味・読み・例文・類語

てい‐き【帝紀】

[1] 〘名〙
代々皇帝即位から崩御までの記録。また、歴史書の帝王に関する記述。〔南史‐周捨伝〕
② (「紀」は、おきての意) 帝王の守るべき法則。帝王のふみ行なうべき道。〔後漢書‐崔駰伝〕
[2] 「古事記」および「日本書紀」の編纂の時、旧辞(きゅうじ)とともに、その材料となった書物歴代天皇系譜・事績を書き記したもの。すめらみことのひつぎ。すめらみことのふみ。
※古事記(712)序「諸家(も)てる帝紀と本辞と、既に正実に違ひ、多く虚偽を加ふ、ときけり」

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デジタル大辞泉 「帝紀」の意味・読み・例文・類語

ていき【帝紀】

天皇の系譜の記録。古事記日本書紀編纂へんさんの際、旧辞きゅうじとともに原史料とされたと伝えられる。帝皇日嗣ていおうのひつぎ

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百科事典マイペディア 「帝紀」の意味・わかりやすい解説

帝紀【ていき】

天皇あるいは皇位継承を中心とする古代の伝承または史書。欽明天皇のころ,伝承・神話を集めた《旧辞(きゅうじ)》(〈くじ〉とも読む)とともに述作されたと考えられている。《古事記》は稗田阿礼(ひえだのあれ)の誦習した《帝紀》《旧辞》を太安麻侶が筆録したもの。
→関連項目旧辞天皇記

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改訂新版 世界大百科事典 「帝紀」の意味・わかりやすい解説

帝紀 (ていき)

《古事記》中・下巻は,歴代天皇の系譜やおもな事跡に関する簡単な記録と,歌謡を含む物語部分からなるが,前者が帝紀,後者が旧辞を指すというのが通説である。《古事記》序文中に〈帝皇の日継,先代の旧辞〉などと,系譜と旧辞が対応するごとくに書かれているからである。しかし《新撰姓氏録(しんせんしようじろく)》の例でわかるように,系譜は縁起的な物語をも含む。したがって帝紀とは《古事記》の八代の物語(中・下巻),旧辞とは神代巻を指すという新説も検討に値する。
古事記
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帝紀」の意味・わかりやすい解説

帝紀
ていき

古代における皇位継承の次第(しだい)を中心とした記録。「帝皇日継(ていおうのひつぎ)」ともいう。旧辞(くじ)とともに『古事記』『日本書紀』の編纂(へんさん)材料となった。帝紀や旧辞には異説が多く、内容にも出入り異同が少なくなかったが、天武(てんむ)天皇はこれを整理して一つの正説を定めようとした。これが『古事記』編纂の動機となった。したがって帝紀の具体的な内容は『古事記』の記載から帰納的に推測される。すなわち天皇の名、皇居の所在、治世中の重要事項、后妃(こうひ)・皇子女の名、それに関する重要事項、天皇の享年、治世年数、山陵の所在などの諸項目にわたるが、歴代にすべてこれらが含まれていたのではなく、そのうちの若干を欠くこともあったと思われる。

[黛 弘道]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帝紀」の意味・わかりやすい解説

帝紀
ていき

古事記』や『日本書紀』の原史料となった書物。奈良時代頃散逸したらしく,原形は伝わっていない。『帝皇日継』とも『先紀』とも『帝王本紀』とも呼ばれたらしい。天皇の名,その世系,后妃,皇子女の名,宮城の所在,治世中の事柄,天皇の年齢と治世年数,山陵の所在などが記されてあったと思われる。『旧辞』とともに口伝えに伝えられたものを6世紀頃筆録してまとめたものらしいが,いろいろの異説を生じて伝えられたため,天武天皇が太安麻呂に命じて整理させた。それが『古事記』である。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「帝紀」の解説

帝紀
ていき

「古事記」編纂材料の一つ。同書序文は「先紀」「帝皇日継(ひつぎ)」とも記し,「旧辞(きゅうじ)」とともに編纂材料としたとのべる。また「日本書紀」天武10年(681)3月条は,川島皇子や刑部(おさかべ)皇子らに詔して「帝紀」および上古の諸事を記し定めさせたと記す。内容については,その名称と「古事記」の記事の分類から,系譜的記事など天皇の事績を編年で記したものであったとする見方が,津田左右吉以来の通説となっている。しかし「古事記」の系譜的記事は同書編者によって体系づけられたとみるのが妥当で,実際のところは明らかではない。成立年代もはっきりしないが,6世紀中頃と推測される。

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旺文社日本史事典 三訂版 「帝紀」の解説

帝紀
ていき

主として天皇の系譜を記した日本最初の歴史記録
『帝皇日継 (ていおうのひつぎ) 』『帝王本紀』ともいう。『旧辞』とともに5〜6世紀ごろから記録され,記紀編纂の原史料となったが,現存しない。

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普及版 字通 「帝紀」の読み・字形・画数・意味

【帝紀】ていき

本紀。

字通「帝」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の帝紀の言及

【国記】より

…《日本書紀》の推古28年(620)条に〈天皇記及国記,臣・連・伴造・国造・百八十部幷公民等本記を録す〉とある。内容は不明だが,《古事記》の原史料となった《帝紀》《旧辞》のうちの《帝紀》に《天皇記》が相当するとすれば,《国記》は《旧辞》で,神代以来の物語の集成かという。《天皇記》《国記》は蘇我大臣家に伝わり,645年(大化1)大臣家が焼かれたとき,《国記》のみは船恵尺(ふなのえさか)が救いだして中大兄(なかのおおえ)皇子に献上したというが残っていない。…

※「帝紀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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