帯下(読み)こしけ(英語表記)fluor genitalis
vaginal discharge

精選版 日本国語大辞典 「帯下」の意味・読み・例文・類語

こし‐け【帯下】

〘名〙 女性性器から出るおりもの。膿性、血性、粘液性など原因によって違った症状を呈する。婦人病の症状の一つ。たいげ。白帯下(はくたいげ)。膣内容。
※俳諧・誹諧之連歌(飛梅千句)(1540)墨何第十「雪はうち散あぶなかりけり 袖返す寒さこしけのただならで」

おび‐した【帯下】

〘名〙
① 帯をしめる腰のあたり。また、衣服の帯をしめる部分
② 帯をしめる所から足までの長さ。
③ かいどりを着るときに使う小袖。

たい‐げ【帯下】

〘名〙 女性性器からの分泌物。こしけ。
史記抄(1477)一四「婦人を貴ぶ処ぢゃと云へば、帯下のなかち、しらちなんどの医をするぞ」 〔黄帝内経素問‐骨空論〕

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デジタル大辞泉 「帯下」の意味・読み・例文・類語

おび‐した【帯下】

帯を締める腰の辺り。
帯を締める位置から足首までの長さ。主にはかまの丈にいう。
掻取かいどりを着るときに使う小袖。

たい‐げ【帯下】

女性の性器からの分泌物。こしけ。はく帯下。白血しらち

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改訂新版 世界大百科事典 「帯下」の意味・わかりやすい解説

帯下 (たいげ)
fluor genitalis
vaginal discharge

女性性器からの分泌物のことで,いわゆる〈おりもの〉のことであるが,通常この分泌物が異常に増加し,外陰部湿潤にし,不快感(帯下感)を感ずるようになったとき,これを帯下または〈こしけ〉という。帯下感は個人差が大きく,実際の帯下の量とは必ずしも一致せず,神経質な婦人は多く感ずる。

 帯下には,排卵時や妊娠時にみられる生理的なものと,病的なものとがある。病的帯下の原因としてはその約80%がトリコモナス症カンジダ症で,その他,炎症あるいは腫瘍,腟内異物などがある。トリコモナスカンジダ菌系は,スライドグラスの上に生理食塩水を1滴たらし,それに少量の分泌物を浮遊させて,顕微鏡下で容易に検出することができる。また,カンジダは水野=高田培地などの簡易診断培地でも検出することが可能である。

 帯下の成分は剝脱(はくだつ)した腟粘膜上皮細胞,白血球,細菌,粘液などで,正常ではpH4.8~5.0の弱酸性で,無臭ないし軽度の酸臭を有するが,病的帯下では弱酸性,中性,アルカリ性で,トリコモナス,カンジダ,嫌気性菌,ブドウ球菌,多量の白血球を含む。程度によって白帯下,黄帯下,血性帯下に分ける。白帯下無色透明ないし白色,淡黄白色のものであり,黄帯下は膿性のために黄色が強くなったもので,細菌と白血球が多く,炎症性の場合に多い。血性帯下は血膿の少量混入したものであり,子宮頸癌では肉汁様の帯下で,強い腐敗臭を発することがある。

 帯下は,部位によって,外陰,腟,子宮帯下に分けられる。卵管帯下はまれである。腟は,その自浄作用腟自浄作用)で正常に保たれているが,病的な場合には自浄作用が障害されて腟清浄度が低くなっている。

 トリコモナス症,カンジダ症による病的帯下の治療には,抗トリコモナス剤,抗真菌剤を用いるが,両者とも再発しやすい。とくにカンジダ症は妊婦や糖尿病患者に発生しやすい。
執筆者:

帯下 (こしけ)

帯下(たいげ)

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百科事典マイペディア 「帯下」の意味・わかりやすい解説

帯下【たいげ】

〈おりもの〉〈こしけ〉とも。女性性器の分泌物をいう。色調によって白帯下,黄帯下,赤帯下と呼ぶ。白帯下は腟(ちつ)内膜上皮,黄帯下は白血球,赤帯下は赤血球の混入による。生理的帯下は白帯下に属し,透明または白色(下着につくと黄色になる)で,排卵期,妊娠時,性的興奮時にふえる。健康時の腟帯下はデーデルライン腟杆(かん)菌が含まれ,腟内が酸性に保たれて,細菌の侵入を阻止している(腟の自浄作用)。病的帯下はトリコモナスの寄生,カンジダや雑菌,淋(りん)菌などの感染,性器の炎症,糜爛(びらん),ホルモン分泌の衰えや悪化,腫瘍(しゅよう)などによって起こる。治療に際しては,単に分泌物を排除,吸収させることよりも,原因を治療することが重要。
→関連項目外陰炎クラミジア感染症子宮癌切迫流産腟炎トリコモナス腟炎妊娠

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帯下」の意味・わかりやすい解説

帯下
たいげ
flow

こしけともいう。婦人性器からの分泌物。多少の分泌物は生理的にあるが,その存在が自覚され,不快感を感じるようになったものを帯下と呼ぶ。大部分は腟内分泌物と頸管の粘液で,妊娠すると増加する。ほかに病的帯下があり,白色のものはトリコモナス腟炎や子宮内膜炎に,黄色のものは淋疾によることが多い。真菌によるものは白色,チーズ様のおりもので,いずれも外陰部に痛みとかゆみを感じる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帯下」の意味・わかりやすい解説

帯下
たいげ

こしけ

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世界大百科事典(旧版)内の帯下の言及

【外陰炎】より

…小児期や老年期には接触皮膚炎や細菌性炎症が多く,性成熟期にはカンジダ症や上記の性行為感染症などが増加する。疾患により症状がかなり異なるが,一般に局所の発赤,腫張,熱感,搔痒(そうよう)感を訴え,腟炎と合併していることが多く帯下が増量する。治療は,局所を安静にし,刺激を避けて清潔を保つことのほか,原因に対する治療を行う。…

【頸管炎】より

…病原菌としては一般の化膿菌や淋菌が主である。黄色膿様あるいは白色の頑固な帯下の増加をきたす。治療としては,細菌検査を行い抗生物質の局所ならびに全身投与を行う。…

【帯下】より

…女性性器からの分泌物のことで,いわゆる〈おりもの〉のことであるが,通常この分泌物が異常に増加し,外陰部を湿潤にし,不快感(帯下感)を感ずるようになったとき,これを帯下または〈こしけ〉という。帯下感は個人差が大きく,実際の帯下の量とは必ずしも一致せず,神経質な婦人は多く感ずる。…

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