平ノリ(読み)ひらノリ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平ノリ」の意味・わかりやすい解説

平ノリ
ひらノリ

謡の拍子型の一つ。喜多流では「小ノリ」ともいう。1句8個の拍子を,謡の七五調1句 12音節に分配してうたうもの。拍子に合う謡のなかで最も普遍的に採用されている拍子型で,七五調を基調とした句を連ねた詞章による場合が多く,字余り字足らずの場合も一定の規則によってリズムを統一する。普通大鼓,小鼓によって囃される部分にあるが,大鼓の加わる場合には「渡り拍子地」という平ノリと類似の特殊な地拍子となる。なお通常の平ノリは実際の演奏の場合,そのリズム型がなるべく目立たないようなめらかに変化させてうたう。また囃子入りと素謡とでは大きな違いがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の平ノリの言及

【謡】より

…拍子不合というのは,詞章の各音節が八拍子(やつびようし)という拍節の第何拍であるかということが規定されていないものをいう。それに対して拍子合は,各音節が八拍子のどの拍であるのかが規定されているものをいい,規定のされ方によって,平(ひら)ノリ,中(ちゆう)ノリ,大(おお)ノリの3種に分かれる。平ノリは,詞章が七五調,中ノリは八八調,大ノリは四四調を基本とし,それぞれの各句が,八拍子一クサリに配分されて拍が決定する。…

【語り】より

…能では,登場した1人の役が過去の物語を相手役に述べるものであるが,シテの語りとワキあるいはアイ(間狂言)の語りとでは,音楽様式上の違いがある。つまり,シテの場合は,台本上の語りの冒頭から途中までのみを,コトバを中心とした〈語り〉の音楽様式とし,そのあとは拍子不合のフシ(節)を挟んで上歌(あげうた)など平(ひら)ノリの節で作曲することによって音楽的に完結させるのを典型とする。それに対しワキやアイの語りは,台本上の語りの全体を音楽的にも〈語り〉の様式で処理する。…

【地拍子】より

…謡には原則として拍の位置が規定されている〈拍子合(ひようしあい)〉と,規定されていない〈拍子不合(ひようしあわず)〉とがあるが,拍子に合う謡はすべて,1句をこの八拍子に割り付ける。そのリズム型に平(ひら)ノリ,中(ちゆう)ノリ,大(おお)ノリの3種がある。平ノリは最も多く用いられるが,七五調の文章を基本としておりその基準句は図の[1]のように配列される。…

【能】より

…ただしコトバの部分は全部拍子不合であり,フシの部分は拍子合と拍子不合が半ばを分け合っている。拍子合のノリ型は,詩型と拍配置の関係に基づいて,平(ひら)ノリ,中(ちゆう)ノリ,大(おお)ノリの3種に分かれる。大ノリは1字1拍,中ノリは2字1拍の明快な拍配置をとっているのに対して,平ノリは3字目ごとにモチと称する延長部分を挿入して,七五調1句12字を8拍に当てはめる独特の拍配置をとっている。…

【拍子】より

…謡(うたい)は,リズム様式の点で拍子不合(ひようしあわず)と拍子合(ひようしあい)の2種があり,後者は八拍子(やつびようし)と称する8拍単位の拍節構造を有するリズム,前者は非拍節的リズムである。そして拍子合の謡はさらに平ノリ,中ノリ,大ノリの3種の別があり,実際の〈拍子当り〉は,各句の字数や節付けによって,さまざまの形がある。このリズム法を地拍子というが,実演に際しては高度なくふうが加えられる。…

※「平ノリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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