平林初之輔(読み)ヒラバヤシハツノスケ

デジタル大辞泉 「平林初之輔」の意味・読み・例文・類語

ひらばやし‐はつのすけ【平林初之輔】

[1892~1931]文芸評論家京都の生まれ。「種蒔く人」「文芸戦線同人。初期プロレタリア文学運動の理論家として活躍したが、のちに同運動の政治主義を批判論争を引き起こした。著作に「無産階級の文化」「文学理論の諸問題」など。訳書ルソーの「エミール」など。

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精選版 日本国語大辞典 「平林初之輔」の意味・読み・例文・類語

ひらばやし‐はつのすけ【平林初之輔】

評論家。京都府出身。早稲田大学卒業後、やま新聞国際通信を経て早大講師、博文館雑誌太陽」の編集主幹。「種蒔く人」同人、続いて「文芸戦線」同人。プロレタリア文学運動の理論的指導者として活躍。著「無産階級文化」「文学理論の諸問題」など。明治二五~昭和六年(一八九二‐一九三一

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改訂新版 世界大百科事典 「平林初之輔」の意味・わかりやすい解説

平林初之輔 (ひらばやしはつのすけ)
生没年:1892-1931(明治25-昭和6)

文芸評論家。京都府の生れ。早大英文科卒。1918年やまと新聞に入社し,文芸時評を担当。20年国際通信社に移り,青野季吉らとマルクス主義を研究。のち《種蒔く人》《文芸戦線》同人となり,初期プロレタリア文学運動の代表的理論家として活躍した。31年国際文芸家協会大会出席のため渡仏,パリ客死する。著書に《無産階級の文化》(1923),《文学理論の諸問題》(1929)などがある。
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百科事典マイペディア 「平林初之輔」の意味・わかりやすい解説

平林初之輔【ひらばやしはつのすけ】

文芸評論家。京都府生れ。早大英文科卒。《種蒔く人》同人となり,唯物史観に基づく文学理論を展開,初期プロレタリア文学の理論的指導者として活躍し《無産階級の文化》を書いた。のちマルクス主義芸術理論を批判し《文学理論の諸問題》を出した。ほかに《日本自由主義発達史》がある。
→関連項目太陽文芸戦線

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「平林初之輔」の意味・わかりやすい解説

平林初之輔
ひらばやしはつのすけ
(1892―1931)

評論家。京都府出身。早稲田(わせだ)大学英文科卒業。1922年(大正11)雑誌『種蒔(ま)く人』に参加し、マルクス主義にたつ気鋭の文芸評論家、文学理論家として活躍。翌23年、評論集『無産階級と文学』を刊行する。唯物史観による文学理論の支柱として高く評価された。しかし運動が統廃合され、政治的に急進化するにつれて離脱。のち『政治的価値と芸術的価値』(1929)を著してプロレタリア文学運動に懐疑的な批判を投げかけて大きな論議を巻き起こした。それを含む後期の評論は『文学理論の諸問題』(1929)にまとめられている。31年(昭和6)パリで客死。柔軟にして科学的な文学研究家であるとともに、推理作家、翻訳家としても知られる。

[紅野謙介]

『『平林初之輔文芸評論全集』全三巻(1975・文泉堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平林初之輔」の意味・わかりやすい解説

平林初之輔
ひらばやしはつのすけ

[生]1892.11.8. 京都,深田
[没]1931.6.15. パリ
評論家。 1917年早稲田大学英文科卒業。『唯物史観と文学』 (1921) で認められ,22年『種蒔く人』に参加,『無産階級の文化』 (23) などでプロレタリア文学運動の理論的指導者となった。しかし,『政治的価値と芸術的価値』 (29) で,マルクス主義芸術論を根本的に批判し,芸術の自主性を前面に押し進めることを試みた。以後,フランス実証主義に基づく文学理論形成に努めた。 31年早大留学生としてフランスに渡り,パリで開かれた第1回国際文芸家協会大会に日本代表として出席したが,同地で客死。ほかに『文学理論の諸問題』 (29) など。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「平林初之輔」の解説

平林初之輔 ひらばやし-はつのすけ

1892-1931 大正-昭和時代前期の評論家。
明治25年11月8日生まれ。初期プロレタリア文学運動の理論家として活躍。昭和4年の評論「政治的価値と芸術的価値」でプロレタリア文学理論の矛盾をついて論争をひきおこす。昭和6年6月15日パリで客死。40歳。京都出身。早大卒。著作に「無産階級の文化」「文学理論の諸問題」,訳書にルソー「エミール」など。

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世界大百科事典(旧版)内の平林初之輔の言及

【プロレタリア文学】より

…1921年創刊の《種蒔く人》誌に結集した小牧近江らは,反軍国主義とその4年前に実現したロシア革命の擁護ということを掲げて,広く進歩的な思想家,作家たちに結集を訴え,明治・大正以来の社会主義文学(木下尚江,石川啄木,宮島資夫(すけお),平沢計七ら)とはちがう新しい運動として出発した。第1次大戦以来のデモクラシーの潮流と,労働者階級の増大,その自覚の成長,小作争議の頻発に見られる農民の新動向などに支えられて,まず進歩派の知識人の運動として始まったのであったが,《種蒔く人》の運動がしだいに進むに伴って,労働者階級と文学の関係,解放運動と文学の役割などについて理論的な手さぐりが進行し,平林初之輔,青野季吉を中心に革命文学の主張が行われるにいたった。しかし〈革命〉ということばは当時の検閲下では禁句であり,伏字にせざるをえなかったので,革命文学という代りにプロレタリア(労働者階級,無産者)の文学ということばをもち出し,22年ころから〈プロレタリア文学〉ということばが掲げられるにいたった。…

※「平林初之輔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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