知恵蔵 「年金情報流出問題」の解説
年金情報流出問題
日本年金機構は、政府の委託を受けて厚生年金や国民年金の管理・運営を行う。社会保障行政の改革により廃止された社会保険庁の業務の一部を引き継ぎ、10年1月に設立された特殊法人で、職員は公務員ではないが職務の公益性、公共性を確保するために秘密の保持義務などが課された「みなし公務員」となっている。日本年金機構によれば、個人情報が納められたサーバーに接続できるパソコンで、外部とのメール送受信などの業務も行っており、メールに添付されたウイルスに感染したのが原因だという。情報漏れにあった人の実数は100万人を超え、その半数以上が現在、年金を受給している人だった。
この問題を巡っては、外部の複数のサーバーを経由して情報が抜き取られており、情報漏れの発覚後も外部とのネット接続を遮断しないままであったなど、パスワード設定以外でも情報管理のずさんさが指摘されている。年金記録などを収納する基幹システム(社会保険オンラインシステム)は、セキュリティー上の観点から外部と遮断されているため、不正アクセスはされていないものと見られる。しかし、日常業務の便宜上、データの一部をファイル共有サーバーにコピーしておくなど、データ管理が組織ぐるみでおろそかにされていたことが明らかになった。年金機構は、情報漏れの該当者におわびの文書を送付すると共に、15年9月からは基礎年金番号を変更するとしている。
(金谷俊秀 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報