幻影肢(読み)ゲンエイシ(英語表記)phantom limb

翻訳|phantom limb

デジタル大辞泉 「幻影肢」の意味・読み・例文・類語

げんえい‐し【幻影肢】

四肢一部を切断したのに、まだ存在しているかのように感じられる現象幻覚肢幻肢

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「幻影肢」の意味・わかりやすい解説

幻影肢 (げんえいし)
phantom limb

幻覚肢ともいう。事故や外科手術で突然四肢を失った場合,喪失した四肢がまだ実在するようにありありと感ずる現象をいう。脳卒中や脳の外傷あるいは脊髄損傷末梢神経障害で四肢が突然麻痺した場合にも,麻痺のない四肢の存在を感ずることがある。幻影肢はそれまでの四肢と同様に自由に屈伸でき,痛みやかゆみも感ずる。同様の現象はまれながら乳房陰茎が切断された際にもみられる。幻影肢は16世紀にフランスの外科医A.パレによって記述されたものであるが,20世紀には幻影肢発生の機序を考察することによって,身体図式body schema(ピックA. Pick,1922)ないし身体心像body image(ファン・ボゲールL.van Bogaert,1934)という概念が確立されるに至った。身体図式ないし身体心像とは,人が外界について外部空間図式をもつのと同様に,自己の体についてもっている立体的な表象像ないし心像imageのことで,これらの概念から,さらに身体失認などの多くの神経心理学的な疾患の病態が解明されるようになった。幻影肢はこれらの身体像から発展した幻覚であるとされるが,なぜある人々にのみ幻影肢が発生するかについてはまだ定説がなく,中枢説のほかに,末梢説や心因説,人間学的な説明などがある。少なくとも,身体部分の急激な喪失を受け入れることができない心的機制あるいはコルサコフ症候群類似の心的機序の働いていることが考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「幻影肢」の意味・わかりやすい解説

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