座敷飾(読み)ざしきかざり

改訂新版 世界大百科事典 「座敷飾」の意味・わかりやすい解説

座敷飾 (ざしきかざり)

床飾(とこかざり)ともいう。室町時代は中国の文物に対するあこがれが強く,書画陶磁器漆器などの名品(唐物(からもの))が数多く輸入された。上層の武家住宅においても,禅寺書院にならって座敷を美術品で飾った(書院造)。これらの飾り方には一定の方式があり,足利義政が将軍であった東山時代には,宋・元を中心とする画家の評価や飾り方,道具類を解説した《君台観左右帳記》という手引書や,東山殿や小川殿の座敷飾の記録が作られている。それらによると,押板(おしいた)(床の間)には軸装の三幅対か五幅対の絵が飾られ,地板には燭台香炉花瓶からなる三具足(みつぐそく)が置かれた。押板に四幅対の絵を飾ることもあるが,そのときは三具足は置かず,花瓶か香炉にかえた。書院には硯屛(けんびよう),硯(すずり),筆架,水入,軸物,印籠,卦算水瓶などを置き,上に喚鐘をさげる。違棚はいろいろな飾り方があり,茶碗,茶入,薬器,香炉,食籠などの工芸品が置かれていた。東山殿や小川殿の座敷飾をみると,部屋の中で押板や違棚,書院が占める位置は定形化していない。桃山時代になると室内を美術品で飾る風潮は薄れたが,かつて美術品を飾る場であった床の間,違棚,書院および納戸構(なんどがまえ)が1ヵ所に集まり,配置も定形化して,対面などに使われる広間や書院を威厳づける装置として装飾的に扱われるようになる。この変化が起こった時期は断定できないが,豊臣秀吉聚楽第大広間では床,棚,書院,帳台構が定形化しているので,織田信長が活躍した時代であると思われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の座敷飾の言及

【池坊専応口伝】より

…本文には,技法上の法則や心構え,すなわち祝言の花,移徙(わたまし)の花,軍陣の花,五節句の花など生活の中での花の心得などが述べられ,跋文には花道を志す者への心得を多くの比喩をとおし,また具体論で〈稽古のほどふかければ,興ある姿を立出す事あり〉と述べている。 《座敷荘厳之図》は,専応が《君台観左右帳記》の法式をふまえながら,自己の主張を加えた座敷飾法式の記述である。押板に飾る対幅とその前に飾る三具足の飾り法,また書院や違棚と柱・縁などに飾る珍重な諸道具の置き合せの位置などを明示した図と,それにかかわる法則が書かれている。…

【いけばな】より

…夏の季節をのぞいて,中心になるものは樹の枝で直立し,それに他の花材がそえられてゆく初期の立花は,飾る花とはいいながら聖性をもった一瓶の花とみなされていて,中国の挿花とはちがって依代的な花への神聖観のうかがえるのは特徴といえよう。
[立花の成立]
 座敷飾の花として立花が成立したのは,室町中末期のことであって,立花の専門家が登場して将軍邸や禁裏において花を立てはじめ,それに従って法式がしだいに定められるようになった。《蔭涼軒日録》に見るように,立阿弥や台阿弥といった人々,また《碧山日録》に記される連歌師としても著名な池坊専慶,《言国卿(ときくにきよう)記》における山科家の雑掌,大沢久守などは,依頼を受けて花を立てた専門家の代表であるとみてよい。…

【住居】より

…(2)屋敷への入口は,唐門と棟門,棟門と冠木門といった組合せの二つの門を併置するものになり,二つの門から建物へ向かう通路の間は塀で仕切られ,唐門から中門廊の車寄へ,棟門からは遠侍へといったぐあいに,身分による建築空間の使い分けが建築配置の上にもはっきり表れるようになる。(3)足利義政の東山殿では,座敷飾として押板,違棚,書院,納戸構(なんどかまえ)などがあったが,やがて《匠明》所載の〈昔主殿の図〉のように,上段の周囲に集まり,対面の場を威厳づける座敷飾として定形化するようになる。(4)床には畳が敷き詰められ,貴人の座として上段が設けられる。…

【書院造】より

…平安時代の貴族の住宅形式であった寝殿造を母胎とし,中世における生活様式の変化のなかで,日常の生活機能を充足するために変容と改良が加えられた。室町時代初期ごろ,座敷飾の諸要素(押板(おしいた),棚,付(つけ)書院)が出そろい,同時代中期の応仁の乱前後の時期に盛行した会所(かいしよ)座敷の飾りに,押板,棚,付書院を組み合わせて装置し,置物を飾る風習が成立した。この座敷飾は中世末までに会所の枠をこえて住宅の主座敷を飾る方式として定着した。…

【床の間】より

…特に床柱に銘木を用いるなど,当初の書画を飾る目的よりは,床の間の存在が格式的な意味合いを持つようになる。第2次大戦以後,床の間は日本住宅の封建的な構成を象徴するものとして,また生活上不合理な空間として糾弾を受けるが,畳敷きの部屋の空間秩序を保つうえで欠くことのできない性格のものであり,形式的には自由な創意を加えられながら,座敷飾の中心的な地位を保っている。 歴史的には,床の間の起源は室町時代の上層階級の住宅に設けられた押板(おしいた)にあると考えられている。…

【日本建築】より

…住宅の面でも,寝殿造はしだいに間仕切りがふえ,複雑な平面をもつようになってきていたが,宋・元の絵画,工芸品など唐物(からもの)の伝来により,これを飾りたてる唐様飾が発達した。これらは室町時代からしだいに設けられるようになった独立の接客空間(会所)に飾られ,座敷飾としての床,棚,付書院が発生した。しかしなおこれらは,つぎの桃山時代の書院造ほど定型化していない。…

【室町時代美術】より


[唐物の影響]
 円覚寺に伝わる《仏日庵公物目録(ぶつじつあんくもつもくろく)》は,当時すでに日本にもたらされていた宋元画や彫漆の類の質量ともに豊富なことを物語る資料だが,輸入された唐物(からもの)の美術品,文房具の精緻さと異国的な美しさは,京在住の武将の華美を好む〈ばさら〉の気風を刺激し,唐物崇拝の風潮を高じさせた。唐物は,室礼(しつらい),すなわち儀式や行事・会合の折の室の荘厳(しようごん)(座敷飾)として用いられた。この唐物荘厳は,室町時代の美術の性格をつくりあげる上で大きな役割を果たしている。…

※「座敷飾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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