庭訓(読み)テイキン

デジタル大辞泉 「庭訓」の意味・読み・例文・類語

てい‐きん【庭訓】

孔子が庭で、子のに対して、詩経礼記を学ばなければならないことを教えたという「論語」季氏の故事から》家庭教育家庭での教訓。ていくん。
庭訓往来」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「庭訓」の意味・読み・例文・類語

てい‐きん【庭訓】

[1] 〘名〙 (孔子が、庭を走る子を呼びとめて詩と礼を学ぶべきことを教えたという「論語‐季氏」の故事から) 家庭内で子に教育すること。有識者が作法を教え指導すること。また、親が子に与える教訓。にわのおしえ。ていくん。
明衡往来(11C中か)上末「何况此等少事乎。朝夕欲庭訓。小生言詩之輩両三人相随可参候
風姿花伝(1400‐02頃)三「全他人の才学におよぼさんとにはあらず。ただ子孫の庭訓をのこすのみなり」 〔晉書‐孫盛伝〕
※俳諧・犬子集(1633)七「源左衛門も月も世に出る 庭訓を夜読ならふ花の春〈貞徳〉」

てい‐くん【庭訓】

※春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉政界叢話「学生此庭訓(テイクン)を奉じ先づ閑室に退いて常に書を朗読し」

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普及版 字通 「庭訓」の読み・字形・画数・意味

【庭訓】ていきん

家庭の教え。〔論語、季氏〕嘗(かつ)て獨り立てり。鯉(り)(孔子の子)趨(はし)りて(よぎ)る。曰く、詩を學びたるかと。曰く、未だしと。詩を學ばざれば、以て言ふこと無しと。〔抱朴子、自叙〕年十三にして、に背かれ、夙(つと)に訓を失ふ。

字通「庭」の項目を見る

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故事成語を知る辞典 「庭訓」の解説

庭訓

家庭での教育のこと。

[使用例] 八歳の今若には、もう自分という者の自覚があった。日頃の庭訓もわきまえていた[吉川英治源頼朝|1940]

[由来] 「論語―季氏」に出て来るエピソードから。孔子の長男はくぎょが、あるとき、小走りで「庭を過ぎ(家の庭に通りかかった)」ところ、孔子から「『詩経』を勉強したか」と尋ねられました。まだですと答えると、「『詩経』を勉強しないと、公の場できちんと話すことができない」と言われたので、伯魚は「詩経」を勉強することにしました。また別の日、やはり庭を通り過ぎたときに「『礼』を勉強したか」と質問されたので、「礼」について勉強することにしました。そのことを聞いたある人は、「君子は、自分の子どもだけ特別扱いして教育しはしないのだ」と感心した、ということです。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「庭訓」の意味・わかりやすい解説

庭訓
ていきん

家庭での教育、親が子供に与える教訓。中国古代の聖人孔子の子伯魚が、孔子の弟子陳亢(ちんこう)に、「孔子が、庭を走り過ぎる伯魚に、詩を学ばなければりっぱにものがいえないと諭し、礼を勉強しなければりっぱな人間として世の中にたてないと教えた」と語ったところ、陳亢は「詩と礼のたいせつなことを会得し、君子たるものは、わが子の教育にある距離を置き、自主的に学ばさせるものだ」と知って、大いに喜んだと伝える『論語』「季子」の故事による。

[田所義行]

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世界大百科事典(旧版)内の庭訓の言及

【庭訓往来】より

…南北朝後期から室町初期の作と推定される。庭訓は,孔子が庭で息子を呼びとめ,詩や礼を学ぶべきことを説いた故事から出た語で,家庭での教訓,父から子への教訓を意味する。手紙文の形式をとり,〈正月状往〉〈同返〉以下12月まで各月2通ずつに〈八月状単〉を加えた25通からなる。…

※「庭訓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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