引出(読み)ひきだす

精選版 日本国語大辞典 「引出」の意味・読み・例文・類語

ひき‐だ・す【引出】

〘他サ五(四)〙
① 物や人を引いて外に出す。引っ張り出す。ひきいだす。ひきいず。
平家(13C前)四「その仲綱めに鞍おいてひきだせ」
② 連れ出す。誘い出す。引っ張り出す。
※両足院本山谷抄(1500頃)一「此人を朝廷に引たいて大に用いたけれども引出す人が無ぞ」
遊女などを身請けする。請け出す。
随筆・独寝(1724頃)下「さやうの客は鍔ぎはになりて引出して女房にする程の客にはなふて」
④ 隠れている物事を表面に出す。引っ張り出す。ひきいだす。ひきいず。
滑稽本浮世床(1813‐23)二「此時和尚は先刻劇で十二分の酔を引出(ヒキダ)し」
⑤ 事をひき起こす。発生させる。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉九「どんな珍事を引出(ヒキダ)すか知れやァしねへ」
⑥ 資金を、他の人や機関に出させる。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉ハイカラ紳士「伯父が嬉しがるのを利用して大分金を引出したからナ」
⑦ 預金や貯金を、預けてある所から出す。おろす。
※銀行小言(1885)〈富田鉄之助〉下「当時本国に残れる各自の私産を引き出さんが為めに」
⑧ 引合いに出す。また、引用する。
※天草本平家(1592)一一「フルイ コトドモ fiqidaite(ヒキダイテ) ソレニ タグエ」

ひき‐い・ず ‥いづ【引出】

〘他ダ下二〙
蜻蛉(974頃)上「すこしひきいでて、牛かくるほどに」
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「ことひきいでてさわがれば聞きにくからん」
引出物として贈る。差し出す。
落窪(10C後)三「女はまめやかなる物をひきいでけると、ちぎりを結ぶ」
④ 引用のために取り出す。例として引く。
源氏(1001‐14頃)桐壺楊貴妃のためしもひきいでつべくなり行くに」
戦いで、敵方軍勢をくり出す。

ひき‐いだ・す【引出】

〘他サ四〙
書紀(720)神武即位前(熱田本訓)「自(をのれ)(おし)を蹈て圧死(をそはれし)ぬ。時にその屍を陳(ヒキイタ)して」
※源氏(1001‐14頃)澪標こころにまかせたる事ひきいだしつかうまつるな」
③ 例として引く。引用する。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「彼髪長媛から引出(ヒキイダ)して、我大御国の古事来歴」

ひき‐で【引出】

〘名〙 (「ひきいで」の変化した語)
① (━する) 引き出すこと。引っ張り出すこと。また、そのもの。
※書紀(720)白雉四年五月・歌謡「鉗(かなき)着け 吾が飼ふ駒は 比枳涅(ヒキデ)せず」
※浄瑠璃・伊賀越道中双六(1783)五「聟引出の此目録」

しょびき‐だ・す【引出】

〘他サ五(四)〙 相手をむりやりに外に引き出す。ひきずり出す。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)四「その時平とやらアしょびき出してぶったたけ」

ひん‐だ・す【引出】

〘他サ四〙 「ひきだす(引出)」の変化した語。
※日葡辞書(1603‐04)「ウマヲ findasu(ヒンダス)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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