引抜き(読み)ヒキヌキ

デジタル大辞泉 「引抜き」の意味・読み・例文・類語

ひき‐ぬき【引(き)抜き】

引っ張って抜き取ること。
他に属している者を自分の方に所属させること。「有能な技術者引き抜き
歌舞伎および舞踊演出で、上の衣装にしつけた糸を抜き取り、すばやくはがして下の衣装に変わること。また、その衣装。
鋼材鋼管などを作るとき、型の穴を通して引っ張り、所定の形や太さにする加工法。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「引抜き」の意味・わかりやすい解説

引抜き
ひきぬき

歌舞伎の仕掛け衣装の一種。演技中,一瞬うちに衣装を替える特殊な仕掛け。衣装の上へ別の衣装を綴じつけておき,綴じ糸の末端につけておいたつまみの玉を引いて,帯の上下の衣装を除去する。つまみの玉は両裾,両袖口,両脇の下 (八ツ口) ,両腰と計8個ある。引抜きには,熟練した後見 (こうけん) の手をかりる。舞踊の『娘道成寺』『鷺娘』などで行われる。

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世界大百科事典(旧版)内の引抜きの言及

【大谷広次(大谷広治)】より

…11年(正徳1),2世市川団十郎から荒事の芸を譲られ,以来,嫌味がなく,小気味のよい実事の芸風を開拓。一方,17年(享保2)夏末,江戸市村座の《国性爺》に水がらくりを用いたり,27年冬,江戸中村座の《八棟(やつむね)太平記》で雪中のセリ出しを試みたり,31年春,同座の《傾城福引名護屋》では,立回りのうちに,世話から時代へと衣装を変える引抜きを工夫するなど,演出面にもさまざまな創意を見せた。(2)2世(1717‐57∥享保2‐宝暦7) 初名辰松文七。…

【歌舞伎】より

…桜,梅,紅葉などの〈釣枝(つりえだ)〉を舞台の上から吊り下げたり,灯入りの月を出す大道具のくふうもある。また,鬘に〈がったり〉といって髷(まげ)の根が落ちて形が崩れる仕掛けや,《東海道四谷怪談》の〈髪梳き〉で使われる,髪が抜け落ちる仕掛けなどがあり,衣裳に〈引抜き〉や〈ぶっ返り〉の仕掛けがある。大道具には,〈屋体くずし〉や〈煽り返し(あおりがえし)〉の特殊技法のほか〈提灯抜け〉〈仏壇返し〉などの仕掛けも行われている。…

※「引抜き」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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