引船(読み)ヒキフネ(英語表記)tug
towing boat

デジタル大辞泉 「引船」の意味・読み・例文・類語

ひき‐ふね【引(き)船/×曳き船/引(き)舟】

引き綱で他の船やいかだなどを引いていくこと。また、その船。曳船えいせん
江戸中期以後の芝居小屋で、2階正面桟敷の前方に張り出した観客席
引き舟女郎」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「引船」の意味・わかりやすい解説

引船 (ひきぶね)
tug
towing boat

タグボート曳船えいせん)ともいう。非自航船の曳航や作業支援に用いられる船で,船体の大きさに比し大出力の機関を搭載し,強力な曳航力をもつのが特徴。港湾用引船と航洋引船に大別される。前者は長さ約30m以下,主機関出力3000馬力程度以下で,はしけ(艀)やいかだ(筏)を曳航するはしけ引船,クレーン船などの曳航,転錨や土運船の曳航を行う作業引船,大型船の離接岸の支援を行う操船用引船がある。港湾用引船では,微速前後進や急速停止などの自由自在な操船を可能にするため,コルトノズル付きプロペラを水平360度旋回させるZ型推進装置をもつ船が多い。航洋引船は遭難船の救助にも利用され,長さ90m,主機出力1万馬力の大型のものもある。このほか,特殊なものとして砕氷能力をもつ砕氷引船もある。曳航は,船尾に設けられた曳航用ウィンチからのロープによって,1隻もしくは最大5隻程度の被曳航船を単列で縦曳きする場合が多い。引船と反対に,多数のはしけを一体にして後方から押すのに用いられる船を押船といい,船首部は四角な形状をしており,がんじょうな押送用フェンダー構造をもっている。
(はしけ)
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百科事典マイペディア 「引船」の意味・わかりやすい解説

引船【ひきぶね】

タグボートtug boat。曳船(えいせん)とも。海上港内河川などで他船を曳航する比較的小型の船。大型船の港内航行,埠頭(ふとう)での方向転換など操船補助,運河通航,ドック入り,あるいは艀(はしけ),いかだなどの曳航による貨物輸送従事。喫水深く馬力が強いのが特徴で,張力を一定に保つ特殊ウィンチなどの曳航装置を備える。長さ90m,1万馬力の主機をもつ航洋引船もある。
→関連項目ラッシュ船

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「引船」の意味・わかりやすい解説

引船
ひきぶね
tug boat

他の船や推進機関をもたないはしけなどを引張って航行する作業船。曳船とも書く。河川での運行などに使われていたが,最近ではもっぱら港内あるいは沿岸の引船,いわゆるタグボートとして造られる。大型船が離接岸したり,ドック入りするときの航行援助に使われるため,速力よりも牽引力が大きく,馬力の強いことが要求される。このタグボートにも,洋上を航行できる大型のものから,小回りのきく小型のものまで,さまざまなものがある。

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世界大百科事典(旧版)内の引船の言及

【作業船】より

…作業台船は,作業の内容に応じて必要な機械類を搭載して作業を行う船で,とくに自己昇降式作業台船はSEP(self elevating platformの略)と呼ばれ,昇降可能な脚によって着底し,作業台本体を海面上にもち上げ,高波浪域での作業を容易にかつ精度よく行うことができる。 押船(プッシャー)は,船首部を艀(はしけ)(バージ)の船尾にはまり込ませ,ロープなどによりバージを連結し押航するもの,引船(タグボート)は,他船を曳引する船で,いずれも低速で大きな推力を得るようコルトノズル推進を採用することが多く,操船性能に優れている。 測量船は音響測深機や船位測定装置などを搭載し,海域の深浅測量を行う。…

※「引船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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