(読み)よわい

精選版 日本国語大辞典 「弱」の意味・読み・例文・類語

よわ・い【弱】

〘形口〙 よわ・し 〘形ク〙
① 強い力や勢いがない。勢力が強くない。
※書紀(720)雄略五年二月(前田本訓)「舎人。性(ひととなり)懦弱(をちなくヨワク)して樹に縁(よ)りて失色(おむあやま)りて」
太平記(14C後)二二「敵返さば堪て弱(ヨハキ)を凌げ」
② 強度が足りない。こわれやすい。もろい。
※和英語林集成(初版)(1867)「Yowai(ヨワイ) ナワ」
③ 劣っている。欠点がある。
徒然草(1331頃)一八六「乗るべき馬をば、まづよく見て、強き所、弱き所を知るべし」
意志が堅固でない。心がぐらつきやすい。気持がしっかりしていない。
源氏(1001‐14頃)柏木「すこしよはき所つきて、なよびすぎたりしけぞかし」
⑤ 身体が丈夫でない。健康でない。体力がない。
※古今(905‐914)哀傷・八五八・詞書「女にはかにやまひをしていとよはくなりにける時」
⑥ 物事の度合が小さい。他を刺激する程度が少ない。
※濁った頭(1911)〈志賀直哉〉六「冬の弱い日光にすら」
⑦ ある物事に耐えたり、積極的に立ち向かったりする力に乏しい。抵抗しにくい。「そういわれると弱い」
※冬の宿(1936)〈阿部知二〉七「あのときは、あなたの体がもう疲れてしまってゐたからですよ。車には弱いやうだし」
効力がうすい。
※ある小官僚の抹殺(1958)〈松本清張〉二「斡旋収賄では罪にならない。それに沖村喜六の自供だけではいかにも弱い」
⑨ ある事柄について不案内である。にがてだ。
※校正おそるべし(1959)〈加藤康司〉聞き違い、見違い、思い違い「このごろちまたでは、『おれは女の子にはヨワイ』とか、『ぼくフランス語にはまったくヨワイんだ』とかいう使い方が盛んにおこなわれている」
⑩ 取引市場で、相場下落気味のさま。
よわ‐が・る
〘自ラ四〙
よわ‐げ
〘形動〙
よわ‐さ
〘名〙
よわげ‐さ
〘名〙

よわ・る【弱】

〘自ラ五(四)〙
① 病気や疲労などで身体が弱くなる。衰弱する。⇔強る
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「衆生は光色減し、勢力尽く衰(つひ)に微(ヨワ)りなむ」
※源氏(1001‐14頃)若紫「かのあまうへ、いたうよわり給にたれば、なに事もおぼえず」
② 勢いが衰える。かすかになる。⇔強る
※後拾遺(1086)秋上・二七二「秋風に声よはり行くすず虫のつひにはいかがならんとすらん〈大江匡衡〉」
気力が衰える。心細くなる。また、抵抗しにくくなる。⇔強る
※源氏(1001‐14頃)夕霧「あさましきことをよわれる御心ちに、うたがひなくおぼししみて」
④ 困る。困却する。迷惑する。
※洒落本・客者評判記(1780)実悪之部「はだをぬぐと、かこ字や、女の首がほってあるにはよわらせる」
⑤ 魚肉などの鮮度が落ちる。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)二「弱(ヨハリ)し鯛の腹に針の立所」
[語誌]上代には見えず、中古に入ってから、主として散文で用いられ、院政期以降は和歌にも見られるようになった。

じゃく【弱】

[1] 〘名〙
① よわいこと。また、そのもの。⇔
※文明本節用集(室町中)「以寡勝衆者恩也、以(ジャク)強者民也〔三略〕」 〔礼記‐祭義〕
② 二〇歳の異称。二〇歳前後の年若な男子。
※随筆・折たく柴の記(1716頃)下「凡そ人の幼といひ、弱といひ、壮といひ、強といひ、艾(かい)といひ、耆(き)といひ、老といひ、耄(ばう)といふ」 〔礼記‐曲礼〕
③ 年齢が少ないこと。いとけないこと。幼少。〔史記‐周本紀〕
[2] 〘接尾〙 ある数の端数を切り上げたとき、示す数よりは少し、不足があることをいうために、数字のあとに付けて用いる。⇔
※続俳諧師(1909)〈高浜虚子〉五三「月末の計算が二十円弱(ジャク)の損失」

よわり【弱】

〘名〙 (動詞「よわる(弱)」の連用形の名詞化) 弱ること。衰えること。
※虎明本狂言・居杭(室町末‐近世初)「大水出ればつつみのよはり」
※俳諧・桃の実(1693)「君はみなみな撫子の時〈芭蕉〉 泣出して土器ふるふ身のよはり〈兀峰〉」

よわら・す【弱】

〘他サ五(四)〙 弱るようにする。弱るようにしむける。
※信心録(ヒイデスの導師)(1592)二「Sancto ノ ゴシンヂュウ ノ ツヨサ ワ youaraxi(ヨワラシ) タテマツル コト モ カナワズ」

よわ‐ま・る【弱】

〘自ラ五(四)〙 力や程度が次第に弱くなる。だんだん勢いが衰える。
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一「遙か遠方まで美音が響き渡って〈略〉処々方々で弱まったり絶え絶えになったりして」

ゆわ・い【弱】

〘形口〙 ゆわ・し 〘形ク〙 「よわい(弱)」の変化した語。〔名語記(1275)〕
※玉塵抄(1563)一「男はつをうてかち、女はゆわうてまくるぞ」

よわ‐・める【弱】

〘他マ下一〙 よわ・む 〘他マ下二〙 弱くする。力や勢いを衰えさせる。よわます。
※史記抄(1477)五「一になって、秦をよわめうとするぞ」

よわ‐・む【弱】

〘他マ下二〙 ⇒よわめる(弱)

よわ・し【弱】

〘形ク〙 ⇒よわい(弱)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「弱」の意味・読み・例文・類語

じゃく【弱】[漢字項目]

[音]ジャク(漢) ニャク(呉) [訓]よわい よわる よわまる よわめる わかい
学習漢字]2年
〈ジャク〉
よわい。「弱者弱小弱震弱点虚弱強弱衰弱脆弱ぜいじゃく惰弱軟弱柔弱薄弱微弱病弱貧弱文弱幼弱
わかい。「弱冠弱年弱輩
〈よわ〉「弱気弱火気弱腰弱年弱
[難読]弱竹なよたけ

じゃく【弱】

[名]よわいこと。また、よわいもの。「こたつの目盛りをにする」「アルカリ性」⇔
[接尾]数量を表す語に付いて、実際はその数よりも少し少ないことを表す。数の端数を切り上げたときに用いる。「500人の聴衆」「20万円の給料」⇔

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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