弾劾裁判[アメリカ合衆国大統領](読み)だんがいさいばん[アメリカがっしゅうこくだいとうりょう]

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

弾劾裁判[アメリカ合衆国大統領]
だんがいさいばん[アメリカがっしゅうこくだいとうりょう]

アメリカ大統領を罷免するための特別な裁判制度。アメリカ合衆国憲法は大統領が「重大な犯罪および罪過によって弾劾されたり有罪判決を受けた場合は,その職を追われる」と規定している。手続きとしては,まず下院が弾劾訴追を決議し,作成された決議案に対して過半数賛成があれば上院による弾劾裁判に持込まれる。裁判では,下院代表委員が検事役を,上院議員全員が陪審員役を務め,裁判長には連邦最高裁長官があたる。検察・被告側とも証人申請と証拠提出を行い,弾劾決議の各項目について上院が採決する。3分の2以上の賛成票が集まれば,最終的に罷免の是非を問う2度目の採決が行われる。アメリカ史上初の大統領弾劾裁判は 1867年にジョンソン大統領に対して行われた。ジョンソンは大統領権限の範囲をめぐって下院と対立し弾劾決議を受けたが,罷免にはいたらなかった。また 1974年にはニクソン大統領のウォーターゲート事件関与疑惑がもちあがり,下院で弾劾決議が採択された。しかし,採択直後にニクソンが辞任したため裁判にはいたらなかった。 99年1月,クリントン大統領の不倫もみ消し偽証疑惑をめぐり,史上2回目の大統領弾劾裁判が行われたが,同年2月クリントンの無罪が確定し罷免を逃れた。

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