形・型(読み)かた

精選版 日本国語大辞典 「形・型」の意味・読み・例文・類語

かた【形・型】

〘名〙
[一] 物体平面または空間を占めている有様
① 外見に現われた様子やかたち。
書紀(720)雄略四年八月・歌謡「その虻(あむ)蜻蛉(あきづ)早や食ひ 這(は)ふ虫も 大君に奉(まつ)らふ 汝(な)が柯陁(カタ)は 置かむ 蜻蛉島大和(あきづしまやまと)
※大鏡(12C前)四「からすのついゐたるかたをかめにつくらせ給て」
② 原物に似せて作ったもの。絵画や彫刻や模型。
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「冝く彼の神の象(みカタ)を図造(あらはしまつ)て、奉招祷(をきたてまつ)らむ」
古今(905‐914)秋下・二九三・詞書「御屏風に龍田川にもみぢながれたるかたをかけりけるを題にてよめる」
③ 図面。地図。また、模様。
※書紀(720)天武一〇年八月(北野本訓)「多禰嶋に使人等を遣して、多禰国の図(カタ)を貢る」
※洒落本・仕懸文庫(1791)二「いいゆかただ。本国寺ぎれのかただな」
④ 前に物事のあったことを示すしるし。あとに残されたしるし。あとかた。形跡。また、あとに残す記念。かたみ。
※枕(10C終)二四七「うへのきぬの色いときよらにて、革の帯のかたつきたるを」
徒然草(1331頃)三〇「古き墳(つか)はすかれて田となりぬ。そのかただになくなりぬるぞ悲しき」
⑤ 占いの時に現われるしるし。うらかた。
万葉(8C後)一四・三四八八「生ふ楉(しもと)この本山真柴にも告(の)らぬ妹が名可多(カタ)に出でむかも」
⑥ 銭の面で、文字のあるほう。⇔縵面(なめ)
※物類称呼(1775)四「銭 ぜに 畿内にて表の方を もじと云 東国にて、かたと云」
⑦ 借りた金が返せない場合の保証として相手に渡す約束をしたもの。抵当。担保
※高野山安養院所蔵普賢延命法裏文書‐(年月日未詳)(鎌倉)某書状「物のかたに、人にまいらせたるころを、とるへきゆゑあらす」
⑧ ある物事が存在する証拠や理由となるもの。根拠。
通行手形のこと。
※島根のすさみ‐天保一一年(1840)六月一七日「ここにてしたくととのへて南杢へ参り、御関所におゐてかたを出し鉄砲の改を受」
[二] いろいろな形をつくるもとになるもの。また、いろいろなものから抽象される形態
① 金属や土などを詰め込んで、ある形につくり出すための器。また、模様を彫り抜いて布帛に当て捺染(なっせん)するのに用いる紙や、衣服、履物などの形を書いて切った紙。鋳型や型紙。比喩的に、ある部類のものを制約する枠。
※拾遺(1005‐07頃か)雑上・四九八・詞書「左大臣の、土御門の左大臣の聟になりて後、したうづのかたをとりにおこせて侍りければ」
※玉塵抄(1563)一「鉄がとろけてねばい湯になるぞ。それを汲で器のかたをして、そのかたにかくるぞ。かたの如になるぞ」
② 伝統的な形式や制度。習慣となっているやり方。→形の如し形のよう
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)若菜上「今日はなほかたことに儀式まさりて」
※東京の三十年(1917)〈田山花袋〉私のアンナ・マール「今までの型を破壊して、何か新しい路を開かなければならなかった」
③ 実質が伴わない、名前や形式だけのもの。→形ばかり
※浮世草子・傾城色三味線(1701)湊「銀出しながら、しっかいそれは人の形(カタ)になって、貴さまの持あそびものに成やうな物なり」
④ 芸能、武道、スポーツ、文芸などで、規範となる様式。芸能では、演出、演技などの伝統的な表現様式。武道、スポーツでは攻撃、防御典型的な場合の適切な対応の様式。文芸では、定型詩などに見られる表現様式。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉一月暦「例年八日を以て鏡開を行ひ、嘉納(かなふ)館長の挨拶についで色々の型(カタ)、乱取などあり」
⑤ ある種のものに共通する特徴をよく表わしている性質、形態、やり方。典型。タイプ。
※真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉四八「お賤が引くなア女の力ぢゃア足りねえから、新吉さん此縄を締めてなざア能くある形(カタ)だ」
※大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉一三「ふだんから会社員の型にはづれて居る為めに」
⑥ あるきまった大きさや形。サイズやかっこう。
※百鬼園随筆(1933)〈内田百〉百鬼園新装「ずっと上等物になりますれば、それはいくらも大きな型も御座いますけれど」

がた【形・型】

〘語素〙
① 名詞に付いて、そのような形をしたものの意を表わす。「卵形」「うずまき形」
② (型) 主として漢語の名詞に付いて、その典型である、またはその類型であることを意味する。一見して、それとわかるような性質、様子であること。タイプ。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉二「先づ英雄型の人物であったが」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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