か‐の【彼の】
[2] 〘代名〙 他称。
話し手、相手
両者から離れた、また、両者に
共通の話題である、
事物、人をさし示す(
遠称)。直接それをさしていうのをはばかる場合に、遠まわしにその名に代えていう、
近世の隠語的
用法。あれ。
(イ) あの物。例の物。また、あの事。例の事。
※浮世草子・好色万金丹(1694)三「奈良茶は
夜分、かののおゆるは
朝時分」
(ロ) あの人。例の人。
※俳諧・大坂独吟集(1675)下「恋衣おもひたつ日を
吉日に
あしにまかせてかのが行末〈由平〉」
[3] 〘
連体〙 ((一)の一語化したもの) 話し手、相手両者から離れた、また、両者共通の
事柄に関係のあることを指示する。現代語では「あの」よりも文語的な表現。
※
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「『アノ本田さんはどうだったエ』『彼
(カ)の男はよう御座んした』」
[補注](一)と(三)との
境界の判定は極めて困難なので、(三)の
用例は、便宜上、明治以降の
口語文に限った。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「彼の」の意味・読み・例文・類語
か‐の【▽彼の】
[連体]《の一語化》話し手と聞き手双方の既知の事物をさす。あの。例の。「彼の有名な物語」「彼の地」
[連語]《代名詞「か」+格助詞「の」》
1 前に述べた事物をさす。あの。その。
「めなもみといふ草あり。蝮に刺されたる人、―草を揉みて付けぬれば」〈徒然・九六〉
2 《近世語》人や事物を暗示的に示す。例の物・事・人。
「そりゃあさうと、―に極めたか」〈滑・浮世風呂・三〉
[類語]これ・それ・あれ・どれ・この・その・どの・あの
あ‐の【▽彼の】
[連体]《代名詞「あ」+格助詞「の」から》
1 話し手・聞き手の双方から離れた人や物をさしていう。「彼の帽子を取ってください」
2 話し手も聞き手もすでに知っている人や事柄をさしていう。例の。「彼の男がまた来たよ」「彼の件はどうなりましたか」
[感]話のきっかけをつけるとき、言葉に詰まったときなどに発する語。「彼の、ちょっとお尋ねしたいんですけど」「それは、彼の、つまり」
[類語]これ・それ・あれ・どれ・この・その・どの・かの
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