御主(読み)おぬし

精選版 日本国語大辞典 「御主」の意味・読み・例文・類語

お‐ぬし【御主】

〘代名〙 (「お」は接頭語) 対称。室町以後用いられ、対等もしくは対等に近い下位者に対する語。男女とも用いた。そなた。→おのし
※虎明本狂言末広がり(室町末‐近世初)「其すゑひろがりをおぬしはみた事があるか」
[語誌](1)室町期における「おぬし」の待遇価値は、「そなた」に相当し、能・狂言では、やわらかい上品な語として、対等もしくは対等に近い下位の者に対して用いられている。しかし、「ロドリゲス日本大文典」では、身分の低い者や召使等と話すのに用いる卑態とされ、比較的早く待遇価値を下げたものと思われる。
(2)江戸後期になるとさらに待遇価値を下げ、「てめえ」と同様、かなり低い者に対しても用いられるようになる。

お‐のし【御主】

〘代名〙 (「おぬし(御主)」の変化したもの)
① 対称。主として、対等もしくはそれに近い下位者に対して用いる。中世室町時代)以来用いられており、近世では男女とも用いたが、町人の女や遊女などの使用例が多い。
※三体詩幻雲抄(1527)「此間も愛風月花のと云も、をのし一人に多情にして情の切なるに因て也」
② (反射指示) ①を転用して「御自分」の意に用いる。
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)中「ハテおのしの御身斗か、ふびんになさるる四郎二郎迄、命を助かることなれば」

お‐しゅう【御主】

〘名〙 (「お」は接頭語) 御主君。御主人。おしゅ。
謡曲正尊(1541頃)「一大事にて候へども、お主の仰せにて候へば、背(そむ)かれず候ふほどに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「御主」の意味・読み・例文・類語

お‐ぬし【御主】

[代]二人称人代名詞。おまえ。そなた。室町以降用いられ、同輩以下に対する語。古くは男女に用いた。
日頃―が兎や角と、異見がましく悋気りんきをするも」〈伎・小袖曽我
[類語]貴方あなたお宅・貴方様・あんたおまえ貴様てめえおのれうぬそなた其方そっち

お‐のし【主】

[代]《「おぬし」の音変化》二人称の人代名詞。男女ともに用いたが、近世、特に町人の女性や遊女が使った。おまえ。そなた。
「これ番頭、―がむものはなんだ」〈滑・浮世風呂・前〉

お‐しゅう【主】

ご主人。ご主君。
「―のためをわきまへよ」〈浄・手習鑑

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