御前様(読み)ゴゼンサマ

デジタル大辞泉 「御前様」の意味・読み・例文・類語

ごぜん‐さま【御前様】

貴人敬称大名高家高位の人を敬っていう。代名詞としても用いられる。「御前様のお出まし」
「―、万事は下拙めにお任せ下さりませう」〈伎・名歌徳〉
貴人の妻の敬称。特に、大名・旗本などの妻を敬っていう。
上つ方の―へ、一夜づつ御慰みにあげける」〈浮・一代女・一〉

おまえ‐さま〔おまへ‐〕【御前様】

[代]二人称人代名詞近世、男女ともに目上の人に用いた敬称。きわめて高い敬意を表す。あなたさま。
「―はどれさまにおあひなされます」〈浮・一代女・二〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御前様」の意味・読み・例文・類語

ごぜん‐さま【御前様】

〘名〙 (「御前」に尊敬接尾語「さま」を付けていっそう敬意を高めたもの)
① 大名、高家などの妻を敬っていう語。奥方様。代名詞的用法もある。
浮世草子・好色一代女(1686)一「うへつかたの御前(ゴゼン)さまへ、一夜づつ御なぐさみにあげける」
② 大名、高家などを敬っていう語。明治以後は高位・高官の人を敬っていう。代名詞的用法もある。
洒落本・虚実柳巷方言(1794)下「いかに御所出しやとて御客を御前(ゴゼン)さまと称し」

おまえ‐さん おまへ‥【御前様】

〘代名〙 (「おまえさま」の変化した語) 対称江戸時代には、一般社会でも遊里でも使用され、かなり高い敬意を表わした。庶民階級で、妻がその夫を呼ぶ時にも用いる。おまいさん。
※洒落本・青楼五雁金(1788)三「なるほどおまへさんのおっしゃるが御尤でござります」
[語誌](1)近世前期上方で生まれ、最高の待遇価値をもった「おまえさま」の親愛的な表現として一般に普及した。
(2)近世後期に「あなた」が生まれて敬意を下げたが、上方では「おまいさん」、遊里から生じて広まった「おまえはん」「おまはん」など多様な形があり、江戸では庶民に「おめへさん」の形で多用された。

おまえ‐さま おまへ‥【御前様】

〘代名〙 (代名詞「おまえ」に接尾語「さま」の付いたもの) 対称。上位者に対するきわめて高い敬意を表わす。江戸時代では特にあらたまったいい方として男女ともに用い、また、遊里ことばとしても用いられた。
※虎明本狂言・比丘貞(室町末‐近世初)「おまへさまをたのふで、名をかへてもらいたいと申に付て」

おまい‐さん【御前様】

〘代名〙 (「おまえさん(御前様)」の変化した語) 対称。江戸時代には、対等以上の人に対して用いられたが、現代では対等以下の相手に用いられる。
※洒落本・傾城真之心(1789‐1801)一「おまひさんがそのやうにおなきなさると」

おめえ‐さま【御前様】

〘代名〙 (「おまえさま(御前様)」の変化した語。「おめいさま」とも) 対称。江戸時代には、対等以上の相手に対して用い、かなり高い敬意を表わした。
※雑俳・柳多留‐一〇(1775)「きうくつにすわっておめへさまといひ」

おめえ‐さん【御前様】

〘代名〙 (「おまえさん(御前様)」の変化した語) 対称。江戸時代には、対等またはそれ以上の相手に対して用いた。「おめえさま」よりはやや敬意が低い。
※雑俳・柳多留‐一一(1776)「おめへさんお聞なんしと祭前」

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