御嶽(読み)おんたけ

精選版 日本国語大辞典 「御嶽」の意味・読み・例文・類語

おん‐たけ【御嶽】

〘名〙 「おんたけさん(御嶽山)」の略。

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日本歴史地名大系 「御嶽」の解説

御嶽
おんたけ

小坂町の東端、長野県との境にそびえる成層火山。乗鞍のりくら火山帯の南端に位置する。「御嶽さん」と通称される。長野県に属するけんヶ峰(三〇六三・四メートル)最高峰に、継母ままはは(二八六七メートル)摩利支天まりしてん(二九五九・二メートル)継子ままこ(二八五八メートル)などの外輪山がある。剣ヶ峰山頂には御嶽神社が祀られ、夏には全国から多数の登拝者が集まる信仰の山でもある。一般には木曾御嶽と通称されるが、岐阜県側の人々は飛騨御嶽とよんでいる。貝原益軒の「岐蘇路之記」(宝永六年序)に「おんたけとは木曾の御嶽なり。(中略)富士・浅間にもならぶ程の山なり、所の人はおんたけと云。御嶽なり」と記す。御嶽をおんたけとよむのは、古くは木曾御嶽がその山容から王嶽おうだけと称されており、修験道の国峰くにみたけに数えられて御嶽の字があてられるようになった。しかしおうだけのよみが残り、それが転訛しておんたけとなったと考えられるが詳細は不明。なお中間的呼称として王御嶽おうみだけ・オンミタケがある。

火山活動の始まりは洪積世とされ、一時は噴火口は一つで摩利支天山を最高峰とした標高三五〇〇メートルに達する山容であったと推定されている。この活動期に噴出された溶岩の一部は、約一七キロを隔てた落合おちあいにまで流下している。洪積世末期頃の再噴火により火口が移動して山頂部が南北に延び、北から継子岳・摩利支天山・剣ヶ峰・継母岳と続く起伏に富んだ複雑な山容となった。新しい火口は現在も凹みとして残り、一ノ池・二ノ池・三ノ池・四ノ池とよばれる。三ノ池火口の活動後、火山活動は鎮静化したが水蒸気爆発は繰返され、地獄じごく谷谷頭部や五ノ池などの小凹みとなって残った。その後は火山活動休止の状態が永く続き、御嶽の火山活動を示す記録はみられない。しかし昭和五四年(一九七九)一〇月二八日早朝有史以来初めてとされる爆発を起こした。火山活動の中心となった小火口群は剣ヶ峰の南斜面に新たに生じたもので、噴煙を伴って放出された火山灰の量は約一八万トンとされる。火山灰は約一五〇キロ離れた群馬県前橋市にも達している。現在は時折白色の蒸気噴煙が遠望できる程度に鎮静化した。

御嶽
おんたけ

御嶽は、長野・岐阜両県の県境にそびえる乗鞍火山帯南端の独立したコニーデ型の火山。最高峰の剣ヶ峰(三〇六三・四メートル)を中心に、その周囲に摩利支天まりしてん継母ままはは岳・継子ままこ岳などの外輪山を従え、長い裾野を引いている。山頂には日本最高位の火山湖といわれる二ノ池をはじめ三ノ池など五つの火山湖がある。頂上には御嶽神社が祀られ、夏季には全国から多数の登拝者が集まり、信仰の山として知られている。裾野に広がる村は、王滝おうたき三岳みたけ開田かいだと岐阜県益田郡小坂おさか町である。

御嶽は古くは王嶽おうだけとよばれていたらしく、王滝も同意語で、古い山名が麓の村名王滝村となって残っている。近世初期の王滝村の古文書(松原文書)には「おのたけ」「おのたけ村」「王之滝村」などと出てくる。王嶽が修験道の道場国峰くにみたけとなるようになって、修験道の本山「金峰山きんぷせん」の「金の御嶽かねのみたけ」にならって、「王の御嶽おうのみたけ」と尊称していたもので、王滝村の滝氏所蔵の古祭文には「王御嶽座王権現」とか、「ヲンミタケザ王権現」「王御嶽登山清女行法」などと出てくるし、江戸時代初期の「木曾惣図」にも宝暦七年(一七五七)の「吉蘇志略」にも頂上の社祠を「王権現」とよんでいる。王嶽から御嶽おんたけへ変わっていく過程についてははっきりしないが、貞享二年(一六八五)木曾路を通った貝原益軒は「岐蘇路之記」に「おんたけとは木曾の御嶽なり。(中略)富士・浅間にもならぶ程の山なり。所の人はおんたけと云。御嶽なり」と書いており、「御嶽」の漢字をミタケと読まず、「オンタケ」と読むようになったものと考えられる。

御嶽
みたけ

上県郡第一の高峰。御岳とも。外洋から望んだときの眺めは格段に大きくみえ、近海を航行する船の目標とされて対馬のシンボルでもあった。古来崇敬の厚い霊山で、深い原生林に覆われる。「津島紀略」に(四九〇メートル)(四七九メートル)大平おおひら(平岳、四五七・八メートル)の三峰があるので三岳と称するとあり、美多生と訓じる。また伊奈いな郷・佐護さご郷・豊崎とよさき郷の三郷間にある対州第一の高山とし、上県郡の諸峰は当山をもって本根とするという。

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改訂新版 世界大百科事典 「御嶽」の意味・わかりやすい解説

御嶽 (おたけ)

一般に〈うたき〉と呼ばれる。沖縄の人々のあいだで信仰されている聖なる森。本土の鎮守の森に似た聖地で,沖縄本島では,御嶽のなかに拝所(うがんじゆ)が設けられ,ここで祈願がおこなわれている。八重山の島々では,沖縄本島の御嶽にあたる聖地がウガンとかワン,オンと呼ばれている。御嶽の中心はイベまたはイビと呼ばれ,そこに自然石などがまつられ,その前に香炉が置かれている。のろ,根神,ツカサなどの女性神役以外は,そこに近づくことが禁じられているが,御嶽で枯木を拾うこともタブーになっている。御嶽にまつられている神々はさまざまで,太陽神とか天神,地神,水神,火の神,農業神,村の創始者などがまつられている。なかには,祭神の不明な御嶽もある。一般に御嶽には,これを崇拝する祭祀団体があって,その代表者として選ばれた女性神役は,毎年,御嶽で稲や麦,アワなどの農作物の豊穣の祈願や感謝,あるいは人々の健康祈願,悪霊駆除の祈願などを定期的におこなっている。
執筆者:

御嶽 (うたき)

御嶽(おたけ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御嶽」の意味・わかりやすい解説

御嶽
おたけ

鹿児島県奄美(あまみ)諸島と沖縄県で、神社に相当する聖地をいう。森(もり)あるいはオガミともいい、一般に「うたき」とよばれる。たいていは樹叢(じゅそう)をなし、本殿にあたる神聖な部分をイベ、ウブなどといい、樹木や岩石を祀(まつ)る。礼拝や祭儀は、その前方の拝殿にあたる場所で行う。今日では、屋根と祭壇を設けた拝殿ができている御嶽もある。

 神を祀るところをすべて御嶽と称する傾向があるが、オタケの名のとおり、奈良県の三輪山(みわやま)などのように、土地を鎮護する神を山岳に祀る信仰に由来するらしい。移住先などに遙拝(ようはい)のための御嶽をつくる習慣もあり、御嶽の変貌(へんぼう)を促しているが、現に、山頂をイベとし、麓(ふもと)に礼拝所を置く御嶽もある。類似の山岳信仰は、鹿児島県の薩南(さつなん)諸島にもある。御嶽に出現する神霊は、古くはキンマムン(君真物)とよび、本地を弁財天とした。神社化の進んだ奄美諸島では、明治になって厳島(いつくしま)神社と改称した御嶽もある。

[小島瓔

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御嶽」の意味・わかりやすい解説

御嶽
うたき

オタケ,オタキともいう。沖縄で神を祀る聖所のこと。各地域共同体に1つ以上のウタキがあり,その守護神として各種の祭祀が行われることから,ウタキの神と住民との関係は本土の氏神氏子にあたるもののようにも考えられている。字単位のものから国規模まであり,琉球王国のウタキであったサイハウタキ (斎場御嶽) が特に有名で,最高神女であるキコエオオキミ (聞得大君) がこれを祀り,祈願を行なった。ウタキの形式は各所一様ではないが,おおむね森をなしており,びんろうの木が高くそびえているのが特色である。森の中にはウガンジュ (拝所) が設けられ,その一番奥のところをイビ,オブ,ウブなどといい,男子が入ることは禁じられている。そこには香炉が置いてあり,アシャゲと呼ばれる,祭祀を行う建物を設けたものもある。神はニライカナイといわれる海のかなたの他界から,祭りに際してウタキを訪れるものと考えられている。

御嶽
おたけ

御嶽」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「御嶽」の意味・わかりやすい解説

御嶽【おたけ】

沖縄の村落で祖先神をまつる聖地。〈うたき〉とも。小高い丘の森にあるものが多い。社殿はなく,香炉を置いて拝所(うがんじゅ)とし,近年まで特に男子の立入りを禁じていた。御嶽の神は村落の守護神で,祭に天上または海のかなたから飛来すると信じられており,その日には女神官や村の有力者が参拝する。

御嶽【うたき】

御嶽(おたけ)

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事典・日本の観光資源 「御嶽」の解説

御嶽

(岐阜県可児郡御嵩町)
中山道六十九次」指定の観光名所。

御嶽

(長野県・岐阜県)
日本百名山」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の御嶽の言及

【御嶽】より

…沖縄の人々のあいだで信仰されている聖なる森。本土の鎮守の森に似た聖地で,沖縄本島では,御嶽のなかに拝所(うがんじゆ)が設けられ,ここで祈願がおこなわれている。八重山の島々では,沖縄本島の御嶽にあたる聖地がウガンとかワン,オンとよばれている。…

※「御嶽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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