御新造(読み)ごしんぞう

精選版 日本国語大辞典 「御新造」の意味・読み・例文・類語

ご‐しんぞう ‥シンザウ【御新造】

〘名〙
① (「ご」は接頭語) 新しく作ること、また、そのものを敬っていう語。船にいうことが多く、その場合には「御新艘」と書くことがある。
※本福寺跡書(1560頃)「大津に御著岸わたらせたまひ、御新造へ移奉り」
武家の妻女をさしていう語。妻をめとるときに居所を新造したところからいわれるようになったともいう。ごしんぞ。
※上杉家文書‐享祿三年(1530)一一月二五日・神余昌綱書状「御新造様へ唐織物は被下之旨、対大館与州被成御内書候」
町家富貴な家の妻女をいう。また、他人の妻女、特に、新妻や若女房をいうのに用いた。ごしんぞ。
※浮世草子・好色二代男(1684)一「御しんぞう様からお使と、つぼ口して、長文箱をさし出す手元も」
[語誌]近世幕臣に関して言えば、一八世紀半ば頃までは、旗本の妻の呼称は「御新造様」、御家人の妻の呼称は「(お)かみ様」であったが、天明期(一七八一‐八九)頃には、御家人の妻や江戸上層町人の妻の呼称も「御新造様」となっていたようである。

ご‐しんぞ【御新造】

〘名〙 (「ごしんぞう(御新造)」の変化した語。接尾語「さま」「さん」をつけることも多い) =ごしんぞう(御新造)②③
※雑俳・軽口頓作(1709)「ふるいぞや・御しんぞ様はかへり花」

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デジタル大辞泉 「御新造」の意味・読み・例文・類語

ご‐しんぞう〔‐シンザウ〕【御新造】

他人の妻の敬称。古くは、武家の妻、のち富裕な町家の妻の敬称。特に新妻や若女房に用いた。ごしんぞ。
「吉どん。―さんがもう起きなさいって」〈藤村・桜の実の熟する時〉
[類語]夫人奥様奥さん奥方お上さん御寮人人妻マダムミセス令夫人賢夫人内室令室令閨内儀御寮人ごりょんさん大黒

ご‐しんぞ【御新造】

ごしんぞう」の音変化。
長倉の―が意外だと思ったように」〈鴎外・安井夫人〉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御新造」の意味・わかりやすい解説

御新造
ごしんぞう

江戸時代、武家あるいは富裕な町家の妻や新妻をよんだ尊敬語。通例「ごしんぞ」と呼び習わされる。江戸時代の風俗事典『守貞(もりさだ)漫稿』(喜田川(きたがわ)守貞著)によれば、旗本や御家人の妻を「奥様」とよぶのに対して、諸大名に仕える家臣の妻を御新造とよび、町家の上流階級の妻や医者の妻も御新造と称した。もとは新婦をいい、「新粧」の転訛(てんか)とされる。これとは別に、家庭の奥深い居間にいるところから、「深窓」の転訛とする説もある。このほかに、「ご」は接頭語で、新しく造ることを意味し、婚礼の前に新婦の居所を新しく造ることから、新婦をよぶようになったとする説や、嫁入りのときに新しく船を造ることから生まれた語とする説など諸説ある。のちには、身分にかかわりなく、一般に他人の妻や若女房をよぶのに用いられるようになった。

[棚橋正博]

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世界大百科事典(旧版)内の御新造の言及

【新造】より

…また,〈番頭新造〉は袖留をしたまま姉女郎の身辺を世話する役で〈世話新造〉ともいい,京阪ではこれを〈引舟(ひきふね)〉と称した。なお,江戸時代の武家や町家では妻女を御新造(ごしんぞう)とよぶことがあり,またときには結婚前の少女を新造といった。花魁(おいらん)【原島 陽一】。…

※「御新造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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