御祭猿楽(読み)おんまつりさるがく

改訂新版 世界大百科事典 「御祭猿楽」の意味・わかりやすい解説

御祭猿楽 (おんまつりさるがく)

奈良春日若宮神社祭礼御祭。式日12月17日)の猿楽。現在の形は1946年に復活再興したもので,その能楽関係行事は,17日に影向(ようごう)の松の下で〈開口〉(ワキ方高安流の担当),〈弓矢ノ立合〉(シテ方金春流の担当),〈三笠風流〉(狂言方大蔵流の担当)があり,御旅所で,田楽・細男(さいのう)に続いて,《翁》(神楽式と呼ばれ,金春流家元の担当)と《三番叟(さんばそう)》(〈鈴ノ段〉のみ。大蔵流家元の担当)とが演じられ,翌18日の御旅所での後日能には金春流の能3番と大蔵流の狂言2番とが演じられる。両日の分ともに明治初年の混乱期に金春座だけが参勤したときの形式をほぼ踏襲している。1136年(保延2)の若宮祭始行以来,祭礼(当初は9月17日)の賑神(しんしん)芸能は田楽が中心で,猿楽の役割は少なかったが,室町時代になると猿楽が中心となり,同時に大和猿楽四座に参勤の義務が課せられることになった。四座は松之下の行列に加わり,金春,金剛は〈弓矢ノ立合〉を,観世宝生は〈舟ノ立合〉を松の下で舞い,後日能も四座が10番程度演じるようになった(このころから式日は11月27日が多くなる)。これ以後,祭礼芸能の中心が猿楽であることは変わらなかったが,戦乱影響を受けるようになった室町期なかば以後になると祭礼そのものが衰微して猿楽四座の祭礼へのかかわり方も変わり,1662年(寛文2),観世を除く3座の中の2座が交代で参勤する制度幕府から発せられて幕末まで引き継がれることになった。
猿楽
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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