御薗(読み)みその

改訂新版 世界大百科事典 「御薗」の意味・わかりやすい解説

御薗 (みその)

古代,中世皇室伊勢神宮などの大神社に付属する,食料品調達にかかわる所領。古代の律令制のもとでは,宮内省所属の園池司と典薬寮に薬園が付属していた。前者蔬菜樹菓を植え,品部(しなべ)の園戸が採取などにあたった。園池司は896年(寛平8)内膳司に併合され,園も内膳司の付属となった。《延喜式》には京北,奈良,山科,羽束志,奈癸,泉,平城園などの園が見える。これら官司に付属した園,薬園の多くはのち御厨子所(みずしどころ)の所管となり,御薗と呼ばれるようになった。11世紀中ごろから免田畠,在家を保証された供御人(くごにん)が交易その他によって供御物の貢納にあたるという体制が成立すると,これらの御薗は荘園化の道をたどり,さらに中世には内蔵寮(くらりよう)領の一部として伝領された。代表的なものとして山城国精進御薗,河内国岸御薗,大和国黄瓜(きうり)御薗などがあった。また伊勢神宮,石清水八幡宮,春日神社などの御薗もあり,伊勢神宮の場合11世紀以降荘園の一部として御厨(みくりや)とともに多く寄進,設置された。
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御薗(旧村) (みその)

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百科事典マイペディア 「御薗」の意味・わかりやすい解説

御薗【みその】

古代から中世,皇室の食料品・薬草などを調達するために置かれた所領。〈御園〉とも記される。古代律令制下では宮内省園池司(えんちし)に園,典薬寮(てんやくりょう)に薬園が付属し,蔬菜・果樹,薬草等が栽培された。園池司は896年内膳司(ないぜんし)の所属となった。内膳司の下にあった多くの御薗は11世紀には御厨子所(みずしどころ)の所管となり,それまでの中央政府の直営に代わって,免田畠・在家を与えられた供御人(くごにん)が交易などにより供御物を納めるようになった。これにより御薗の多くは荘園化し,一部は内蔵寮(くらりょう)領として相伝された。11世紀以降伊勢神宮をはじめとする重要神社,摂関家なども御薗を持ち,特に伊勢神宮の御薗は御厨(みくりや)とともに同所領の中心を成した。
→関連項目橘御薗

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御薗」の意味・わかりやすい解説

御薗
みその

三重県中東部、度会郡(わたらいぐん)にあった旧村名(御薗村(むら))。現在は伊勢(いせ)市北部にある地域。旧御薗村は2005年(平成17)に二見(ふたみ)、小俣(おばた)の2町とともに伊勢市に合併した。旧村名は伊勢神宮領であったことに由来する。宮川の河口近くに位置し、第二次世界大戦前までは伊勢沢庵(たくあん)の主産地として知られたが、現在は稲作を中心に、露地野菜、イチゴ、電照ギク、ナシなどを栽培する。近年では住宅化も進んでいる。近畿日本鉄道山田線、国道23号が通じる。高向(たかぶく)大社の御頭神事(おかしらしんじ)は国指定重要無形民俗文化財

[伊藤達雄]

『『御薗村誌』(1989・御薗村)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御薗」の意味・わかりやすい解説

御薗
みその

三重県中東部,伊勢市北部の旧村域。伊勢平野の南部,宮川の河口部にある。 1889年村制施行。 2005年伊勢市,二見町,小俣町と合体して伊勢市となった。地名は伊勢神宮御厨があったことにちなむ。 1944年に立地した大規模なゴム工場のほか,電機とその関連工場が多い。かつてはダイコンの主産地。各種野菜の栽培が行なわれる。高向 (たかぶく) に伝わる御頭神事は,国の重要無形民俗文化財に指定されている。

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