御衣(読み)オオンゾ

デジタル大辞泉 「御衣」の意味・読み・例文・類語

おおん‐ぞ〔おほん‐〕【衣】

着る人を敬って、その衣服をいう語。お召し物。みぞ。
「なよよかなる―に、髪はつやつやとかかりて」〈若紫
夜着よぎ
「―ひきかづきて臥し給へり」〈・葵〉
[補説]中世以降は「おんぞ」になったと思われる。

おん‐ぞ【御衣】

《中古の「おおんぞ」の中世以降の言い方》「おおんぞ」に同じ。
鈍色にぶいろの―引き掛けさせ給ひて」〈とはずがたり・一〉

み‐けし【衣】

《「けし」は尊敬語「けす」の連用形から》貴人を敬って、その衣服をいう語。おめしもの。みぞ。おんぞ。
筑波嶺新桑繭にひぐはまよの衣はあれど君が―しあやに着欲しも」〈・三三五〇〉

み‐そ【衣】

後世「みぞ」とも》貴人を敬って、その衣服をいう語。おんぞ。
「いと寒きに―一つ貸し給へ」〈大和・一六八〉

ぎょ‐い【御衣】

天皇・貴人などを敬って、その衣服をいう語。お召しもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御衣」の意味・読み・例文・類語

み‐そ【御衣】

〘名〙 (後世「みぞ」とも)
① 衣服を敬っていう語。おめしもの。みけし。おんぞ。おおんぞ。
書紀(720)仁徳即位前(前田本訓)「時に太子は、布袍(あさのミソ)(き)たまひて檝櫓(かち)を取りて」
斎服
※水戸本丙日本紀私記(1678)景行明衣(ミソ)
[語誌]→「おおんぞ(御衣)」の語誌

おおん‐ぞ おほん‥【御衣】

〘名〙 (「おおん」は接頭語。「おほむぞ」とも表記) 天皇など高貴な人の衣服。お召物。おおみそ。おんぞ。
※書紀(720)仁徳四年三月(前田本訓)「是の日より始めて、黼(オホムソ)・絓履(おほむくつ)、幣(や)れ尽(つ)きずは、更に為(つく)らず」
[補注]衣そのものに「御」を冠した「御衣」は仮名書きの確例に乏しく「みそ・おほんぞ・おんぞ」のいずれか決しがたいが、「おほんぞ」であったろうと考えられている。

おん‐ぞ【御衣】

〘名〙 (「おん」は接頭語)
① 着る人を敬って、その衣服をいう語。お召し物。みぞ。ぎょい。おんころも。おおんぞ。
※竹取(9C末‐10C初)「願をかなふることの嬉しさとの給て御そぬぎてかづけ給ふつ」
夜着(よぎ)宿直物(とのいのもの)
源氏(1001‐14頃)葵「御ぞひきかづきてふし給へり」

み‐けし【御衣】

〘名〙 (「み」は接頭語。「けし」は「着る」を敬っていう動詞「着(け)す」の連用形の名詞化) 貴人の衣服。お召し物。御着物。みそ。おんぞ。
古事記(712)上・歌謡「ぬばたまの 黒き美祁斯(ミケシ)を ま具に 取り装ひ」

ぎょ‐い【御衣】

〘名〙 天子や貴人などを敬ってその衣服をいう語。お召しもの。
※続日本紀‐天平神護元年(765)一〇月丁亥「到弓削行宮。賜五位已上御衣」 〔李嶠‐春日遊苑喜雨応詔詩〕

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普及版 字通 「御衣」の読み・字形・画数・意味

【御衣】ぎよい

天子の衣服。唐・杜甫〔惜別行~端午の御衣を進奏する~を送る〕詩 雲霧を裁して、衣とす 拜題封して、端午を賀す

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