徴兵制度(読み)ちょうへいせいど(英語表記)conscription

翻訳|conscription

精選版 日本国語大辞典 「徴兵制度」の意味・読み・例文・類語

ちょうへい‐せいど【徴兵制度】

〘名〙 一定年齢に達した国民に対して、兵役の義務を課し、強制的に壮丁を徴集して軍隊に編入する制度日本では明治六年(一八七三)の徴兵令で二〇歳以上の男子に適用され、以後、帝国憲法上の義務となったが、昭和二一年(一九四六兵役法廃止に伴い、なくなった。
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部「四民平等の徴兵制度を無視して」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「徴兵制度」の意味・わかりやすい解説

徴兵制度
ちょうへいせいど
conscription

国家が一定の年齢層から国民を選抜し,一定期間の兵役を課する制度。類似した義務兵役制度は,17~18世紀,民族国家の形成に伴ってヨーロッパ諸国でみられたが,近代的な徴兵制度は,フランス革命において革命政府が施行した 1798年9月の徴兵令が最初である。この徴兵令は 20~25歳の全フランス国民の男子に登録を義務づけるもので,14年以上にわたってナポレオン1世に 261万人の兵士を供給した。1807~13年にプロシアが徴兵制を発展させ,金銭や代人などによる免除を認めず一般国民に兵役を強制する一般兵役義務制を確立し,これを範としてほかのヨーロッパ諸国にも 19世紀に徴兵制度が広まった。日本では明治維新後,和歌山藩土佐藩の兵制改革で徴兵制がとられ,明治政府が明治3(1870)年に徴兵規則を定めた。同 5年に徴兵の詔書および太政官告諭が発せられ,翌 1873年に徴兵令が公布され,満 20歳以上の全男子が兵籍に編入されることとなった。当初は徴兵免除や代人の制などがあったが漸次改定され,1927年兵役法の制定によって国民皆兵の体制がつくられ,1945年の第2次世界大戦終結まで存続した。諸外国ではスイスイスラエルロシアエジプトタイシンガポールベトナム大韓民国朝鮮民主主義人民共和国などが今日でも徴兵制度を実施している。イスラエルなどでは,男子だけでなく女子も徴兵の対象としている。他方イギリスは 1960年に徴兵制を,アメリカ合衆国は 1973年に選抜徴兵制を廃止し,志願兵制度を採用している。さらに 1990年代以降,冷戦の終結と兵器システムのハイテク化に伴ってヨーロッパの軍隊は専門化,職業化が進み,フランスドイツなどが徴兵制度を廃止もしくは停止した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「徴兵制度」の解説

徴兵制度
ちょうへいせいど

国家は国民が防衛すべきであるとの考え方から兵役を国民の義務として負わせる制度。幕末期に萩藩の兵制改革にあたった大村益次郎によって始められ,普仏戦争後のヨーロッパの兵制にならって山県有朋(やまがたありとも)らが実現した。1873年(明治6)1月10日発布の徴兵令は,79年(免役範囲を縮小),83年(代人制全廃,免役を徴集猶予に変更),89年(徴集猶予を大部分制限)と改正をかさね,1927年(昭和2)の兵役法で国民皆兵主義に近づいた。しかし軍当局は,良質な軍隊の維持には膨大な徴兵適齢者から身体検査・学識検査をへた優秀な兵を選抜すべきだと考え,太平洋戦争期を除いて比較的少数の人員に長期の服役を課したが,兵役をいやしいものとしたり,忌避したりする傾向は広く存在した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android