心を遣る（読み）ココロヲヤル

デジタル大辞泉

心こころを遣や・る

１ 心の憂さを晴らす。気晴らしをする。
「花盛り、紅葉盛りなどにものし給ひて、心やり給ふ所あり」〈宇津保・春日詣〉
２ 得意になる。思うままに事をする。
「わが心得たる事ばかりを己おのがじし―・りて」〈源・帚木〉
３ 心をその方にやる。思いをはせる。
「旅の空を思ひおこせて詠まれたるにこそはと、―・りて」〈十六夜日記〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

こころ【心】 を 遣(や)る

① 心に滞るものを他におしやる。心のうさを晴らす。心を慰める。

※書紀（720）雄略即位前（前田本訓）「是の月に御馬(みにま)の皇子曾(いむさき)より三輪の君身狭に善(うるわしかり)しを以ての故に慮(ココロ)遣(ヤラ)むとおほして往(いてま)す」

※万葉（８Ｃ後）三・三四六「夜光る玉といふとも酒飲みて情乎遣(こころヲやる)にあにしかめやも」

※曾丹集（１１Ｃ初か）「東路の行きかふ道の春立たば、花見てこころやらざらめやは」

② 思うままにふるまう。得意げにふるまう。

※能因本枕（１０Ｃ終）三「老いて頭白きなどが、〈略〉おのが身のかしこきよし心をやりて説き聞かするを」

③ 思いを馳せる。考えを及ぼす。思いやる。

※重之集（1004頃）下「仮の宿りにやり水をして心をやれど、いにしへのには似ずやありけむ」

※十六夜日記（1279‐82頃）「歌をみるに、旅の空を思ひおこせてよまれたるにこそはと、心をやりてあはれなれば」

出典　精選版 日本国語大辞典