心霊主義(読み)シンレイシュギ(英語表記)spiritualism

翻訳|spiritualism

デジタル大辞泉 「心霊主義」の意味・読み・例文・類語

しんれい‐しゅぎ【心霊主義】

人は肉体霊魂からなり、肉体が消滅しても霊魂は存在し続けるという考え。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「心霊主義」の意味・わかりやすい解説

心霊主義
しんれいしゅぎ
spiritualism

人間は肉体と霊魂とからなり、死により肉体が消滅しても霊は存在し続け現世の人と交渉をもつことができるという信仰古代および原始社会での信仰に広くみられるもので、今日、文明社会でも葬祭の行事などにその考えの生きていることを知ることができる。とくに19世紀中ごろから欧米を中心に流行した同種思想を近代心霊主義という。

[大谷宗司]

近代心霊主義

18世紀、スウェーデンの自然科学者でかつ神秘家であるスウェーデンボリは、彼が体験した霊界の事情を伝え、近代心霊主義の先駆的役割をなした。1848年、アメリカのニューヨーク州ハイズビルのフォックス家に叩音(こうおん)現象がおこった。同家の姉妹がこの音との通信法を考え出し、それが以前その家に住んでいて殺害された人の霊からのものだということが判明したということになり、この事実は、人間の死後個性の存続、霊界と現世との通信可能性を示す証拠であるとされた。このことが、さらに各地霊媒出現交霊会の流行をもたらし、心霊主義が全米に波及した。また有名な霊媒がヨーロッパに渡り、この思想は広がった。こうした風潮は、当時、物質科学の進歩に伴う唯物的思想や、人間の霊性を否定する進化論などに抵抗を感じていた人たちの心をとらえた。日本では浅野和三郎(わさぶろう)(1874―1937)が1920年(大正9)ごろ心霊主義の紹介啓蒙(けいもう)を行った。心霊主義は心霊現象の科学的研究に識者関心を刺激した。

[大谷宗司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「心霊主義」の意味・わかりやすい解説

心霊主義
しんれいしゅぎ
spiritualism

哲学的には非物質的な霊の世界の存在を主張する立場。より一般的には,死者の霊魂との通信の可能性とその事実を主張する体系的教説と,霊媒を介して実際に霊と通信する行為またはそれを行う団体をいう。おもな行為としては霊媒による死者との会話,物体の移動や叩音などの物理的現象の現出,心霊写真,心霊治療などがある。心霊現象は古くから宗教と結びついて存在し,キリスト教などでは悪魔の所業と考えられ,教会は否定的態度をとっている。比較的体系的な近代心霊主義は 1848年ニューヨークに始り,交霊会が各地に普及した。心霊現象については詐術である場合も多い。

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世界大百科事典(旧版)内の心霊主義の言及

【心霊学】より

…この種の現象は古来各地で知られている。とくにヨーロッパ諸国では,いわゆる心霊主義spiritualismの伝統があり,スウェーデンボリの著作などを通じてなじみが深かったが,19世紀中葉までは系統的研究の対象とはならなかった。1847年デービスAndrew Jackson Davisというアメリカの無学な一青年が催眠のトランス状態で神秘的大著を口述するという事件があり,翌48年にはニューヨーク州の寒村で〈ハイズビル事件〉が起こる。…

※「心霊主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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