念仏聖(読み)ねんぶつひじり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「念仏聖」の意味・わかりやすい解説

念仏聖
ねんぶつひじり

空也をその祖とし,中世民衆の間に念仏功徳を説き,浄土信仰を広めていった一群遊行者総称平安時代,末法思想の広がりと呼応して厭離穢土・欣求浄土の思想が一般民衆にも強まったが,浄土に到達する手段として,それまで軽視されがちであった念仏を,だれにでもすぐ実践できる方法として説いて回った。それまであまり説法の対象とされることのなかった一般民衆とりわけ下層民に対して信仰を説いたり,空也のように各地で道路を開く,井戸をうがつなど一種の社会事業を行う者もあり,尊崇を受けることが多かった。 (→ )  

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の念仏聖の言及

【隠者】より

…彼らは(ひじり),仙,行者などと呼ばれた。聖はもともと神秘的な霊力をもつと見られており,10世紀ころから浄土教の発展にともない,念仏聖が注目されるようになった。山岳信仰の行者も密教と結びついて活動した。…

【四天王寺】より

…《梁塵秘抄》に往生の聖地としてうたわれ,往生伝や《今昔物語集》などの説話に,往生を願う人びとや四天王寺での往生が記される。四天王寺は念仏聖の集まる地として知られ,熊野,高野山,磯長太子廟,善光寺とともにその拠点となり,彼らによって念仏と太子信仰が各地に広められた。融通念仏をはじめた良忍や法然,親鸞,一遍など鎌倉仏教の宗祖たちの参籠も伝えられ,四天王寺の信仰をさらに増幅させることとなる。…

【聖】より

…すなわち死霊の怨霊化をふせぎ,死霊から祖霊への昇華にはたらきかけ,また霊魂の行方を示し,付着した悪霊を除くなどの機能をもつことが聖の聖たるゆえんであり,仏教以前,仏教以後にあっても,これが聖の基本的な宗教機能であった。 仏教がさかんとなってからの聖を類型的にみると,山の修験聖と里の念仏聖とがあり,前者は呪術者,後者は葬祭者としての性格が濃い。治病・除災の修験聖と鎮魂葬祭の念仏聖との2類型が明確になるのは平安時代であるが,その原態は役角(えんのおづぬ)(役行者)と行基に代表されるように,すでに奈良時代にみられる。…

※「念仏聖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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