急性硬膜外血腫(読み)キュウセイコウマクガイケッシュ(英語表記)Acute epidural hematoma

デジタル大辞泉 「急性硬膜外血腫」の意味・読み・例文・類語

きゅうせい‐こうまくがいけっしゅ〔キフセイカウマクグワイケツシユ〕【急性硬膜外血腫】

頭部外傷などにより、硬膜血管損傷し、頭蓋骨硬膜の間で出血が起こり、短時間血腫ができた状態。血腫が脳を圧迫し、頭痛嘔吐などの症状が現れる。血腫が大きくなると、意識障害をきたす。頭蓋内血腫一つ。→急性硬膜下血腫硬膜外血腫慢性硬膜外血腫

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六訂版 家庭医学大全科 「急性硬膜外血腫」の解説

急性硬膜外血腫
きゅうせいこうまくがいけっしゅ
Acute epidural hematoma
(外傷)

どんな外傷か

 頭蓋骨と、頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜の間に出血がたまって血腫になったものです(コラム頭部の解剖図)。

原因は何か

 多くの場合は、硬膜の表面に浮き出たように走っている硬膜動脈(こうまくどうみゃく)が、頭蓋骨骨折に伴って傷ついて出血し、硬膜と頭蓋骨の間にたまって硬膜外血腫になります。そのほか、出血源が硬膜の静脈静脈洞(じょうみゃくどう))の場合もあります。

症状の現れ方

 血腫により脳が圧迫されて症状が現れます。頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん))、最初は激しい頭痛、嘔吐が現れます。血腫が増大すれば意識障害を来し、さらに脳ヘルニアの状態にまで進行すると、深部にある生命維持中枢(脳幹(のうかん))が侵され(呼吸障害など)、最終的には死に至ります。

 血腫の増大による症状の進行は受傷直後のこともありますが、数時間たってから意識がなくなることも多く、注意が必要です。最近の統計では、重症の急性硬膜外血腫の24%で意識障害が遅れて現れています。意識障害出現までの時間はその79%が3時間以内でした。

検査と診断

 血腫は頭部CTで白く映ります(高吸収域)。血腫によって硬膜は頭蓋骨からはがれて内側に張り出すので、血腫は凸レンズ型になります。

治療の方法

 血腫の大きさと症状の程度によって、緊急に開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)が行われます。日本のガイドラインでは、血腫の厚さが1~2㎝以上を手術の目安にしています。

 症状が軽い頭痛や嘔吐だけで血腫が少量の場合は、入院経過観察、あるいは頭蓋内圧亢進に対して脳圧降下薬(グリセオール)の点滴注射が行われることもあります。少量の血腫は、数カ月以上を要することもありますが、自然吸収により消失します。

 急性硬膜外血腫単独で、脳の損傷(脳挫傷(のうざしょう)びまん性軸索損傷(せいじくさくそんしょう)など)を合併していなければ、血腫除去術で脳の圧迫を取り除くことにより、症状の回復が期待できます。ただし、血腫の増大が急速だったり、症状が進行してから発見された場合などで、脳ヘルニアが進行して脳幹の機能が失われた状態では(たとえば呼吸停止)、手術での危険が高く、血腫が取り除かれたとしても、意識障害の後遺症や死亡の危険があります。

 最近の統計では、昏睡(こんすい)状態の重症急性硬膜外血腫の死亡率は20%、社会復帰は62%と報告されています。

並木 淳

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「急性硬膜外血腫」の解説

きゅうせいこうまくがいけっしゅ【急性硬膜外血腫 Acute Epidunal Hematoma】

[どんな病気か]
 頭蓋骨(ずがいこつ)の内側におさまっている脳は、その表面を外側から、硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)という3層の膜でおおわれています。
 硬膜にある血管が切れて出血し、頭蓋骨と硬膜の間に血のかたまり(血腫(けっしゅ))ができるのが硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)です。
 頭蓋骨骨折の際にも生じます。
[症状]
 頭にけがをした直後は意識がはっきりしませんが、しばらくすると意識をとりもどして元気になることもあります(意識清明期(いしきせいめいき))。しかし、血腫が大きくなるにつれ、数時間のうちに(多くは1時間以内)、また意識障害がおこってくるのが特徴です。
[治療]
 ただちに手術を行ない、血腫を取り除きます。
 手術前に脳圧が上昇してきたら、脳圧降下剤を使用するなどして、脳ヘルニア(血腫に押され、脳組織の一部が正常な位置からはみ出した状態)の発症を予防します。
 脳ヘルニアがおこる前に手術ができれば、良好な予後が期待できます。

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