精選版 日本国語大辞典 「恨の介」の意味・読み・例文・類語
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仮名草子。2巻。作者,刊年とも未詳だが,1609年(慶長14)以後とされる。寛永,明暦,寛文期の異版もある。慶長11年5月旗本松平近正の次男近次(ちかつぐ)が好色無頼の罪で改易され,蟄死(ちつし)した事件や,同14年の烏丸光広ら公家と宮女との密通事件などをモデルにしたとされる。御伽草子的な悲恋物語であるが,関白豊臣秀次の悲劇,お国歌舞伎,三味線,隆達(りゆうたつ)小歌など当時の事件・風俗が織りこまれている。色好みの美男恨の介は清水の万灯会(まんどうえ)で近衛殿の養女,秀次家臣の遺児雪の前を見そめ,千手観音の夢想と後家尼やあやめの前らの手引きで艶書を交わし契りを結ぶが,思慕の余り病死。それを知った姫も,女たちも死ぬ。合葬のときに仏の来迎があるという中世仏教的色彩もあるが,同時代の艶色文学《薄雪物語》に通じ,近世初期の風俗を伝える点に新鮮味がある。
執筆者:浮橋 康彦
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