出典 最新 心理学事典最新 心理学事典について 情報
人間の感情表現の一つであり,自己の無力感,挫折感を伴う。涙を流して泣く,独特の表情,意欲・行動の低下,自己へのひきこもりが観察され,胸がしめつけられるという身体症状の訴えもみられる。悲しみの生じる状況では,愛情や依存の対象が失われるという危機がみられる。この対象は人物の時に強く現れるが,仕事とか生き甲斐,自分の身体等も含まれる。対象喪失にさいし,最初は,怒りや事実を否認することで対処しようとするが,それがどうしようもない事実として認めざるをえなくなった時に,無力感とともに悲しみが生じてくる。S.フロイトは,対象を失った危機を克服するのには,〈悲哀の仕事〉と呼ばれる悲しみを十分に表現できる作業が必要であると述べている。この期間は喪の期間といえる。
このような悲しみが,さまざまな防衛機制で抑えられることがある。事実を認めないこと,死んだ人に自分がなり代わって頑張ること,他の事物に熱中して避けること等がみられる。このように十分な悲しみの表現が抑えられることが,喪の期間を長びかせたり,抑うつ状態を残したりすることにもなる。したがって,悲しい状況では十分にそれを表現できるように共に悲しむこと,悲しさを認めさせることが大切である。悲哀の病的なものはうつ病にみられ,脳の器質的疾患では“すぐに泣く”情動失禁や,悲しめない多幸症もみられる。
執筆者:増野 肇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
情動のうちで比較的基本となっている体験であり、喜びと対比される。さまざまな自己あるいは他人の不幸や失敗の経験、予期あるいは回顧などに伴う抑うつ的な情動をいう。これを引き起こす原因によって、その性質はかならずしも一定していない。軽度の場合には、なんとなく無力な感じという程度で、哀愁とでもいうことができる。特別に不幸や失敗を経験していないにもかかわらず、晩秋のもの悲しさを感じるというのはここに入る。激しい悲しみは悲痛とよばれている体験であり、泣いたり身をよじったりという身体的表出を伴うことが多い。もっとも、なんらかの身体的反応を伴うのは、あらゆる悲しみの情動に共通したことであって、悲痛の場合だけではない。哀愁であっても、落涙を伴うこともある。
情動が身体的変化を引き起こすというのが一般的な考え方であるが、アメリカの心理学者W・ジェームズとデンマークの生理学者ランゲはこれに対して、身体的あるいは生理的な変化が情動を誘発するものであると説いた。悲しいから泣くのではなく、泣くことが悲しみの情動を引き起こすという考えである。これをジェームズ‐ランゲ説James-Lange theoryというが、現代の心理学はこの所説を全面的には肯定していないとしても、実際に涙をこらえているうちは悲しみも抑えられているが、ひとたび落涙し泣きだすに及んで、悲しみが高揚することは確かである。
[花沢成一]
《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...
3/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
2/13 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
1/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
12/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新