慧文（読み）えもん

精選版 日本国語大辞典

えもん ヱモン【慧文】

中国南北朝の北斉の僧。中国天台宗第一の祖。龍樹(りゅうじゅ)の「大智度論」によって大悟し、法を南岳慧思(なんがくえし)に授けたという。北斉禅師。生没年不詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

慧文
えもん

生没年不詳。中国、南北朝時代の北斉(ほくせい)の僧。俗姓は高氏。天台宗の教理の基礎となる三諦(さんだい)、一心三智(いっしんさんち)を唱えた最初の人物といわれる。もっぱら大乗の禅観を行ったが、龍樹(りゅうじゅ)の『中論』を読んで空(くう)・仮(げ)・中(ちゅう)の三諦の理を悟り、また『大智度論(だいちどろん)』を読んで一心三智の妙旨を悟った。

　おもに河淮(かわい)の地に教えを広め、門人は数百であったと伝えられるが、南岳(なんがく)大師慧思(えし)がこれを受け継ぎ、さらに天台大師智顗(ちぎ)に伝えられて、天台宗の教学が確立した。

［池田魯參　2017年1月19日］

[参照項目] | 慧思 | 智顗 | 中論 | 天台宗

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改訂新版　世界大百科事典

慧文 (えもん)
Huì wén

中国，南北朝時代，北斉の僧。慧聞ともいう。姓は高。生没年，生地ともに不明だが，その下に南岳慧思を出すことで，天台宗第2祖とされる。先に姚秦の羅什が訳出した竜樹の著作によって，禅観の実践につとめ，一心三観の理を悟って，その教理を集大成する。慧思を介して，天台智顗（ちぎ）がこれを総合し，法華三昧を軸として，天台宗を開創する。一心三観とは，空仮中の三諦を，一心の上に体験するもので，天台学の根拠となっている。
執筆者：柳田 聖山

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」