(読み)イ

デジタル大辞泉 「慰」の意味・読み・例文・類語

い【慰】[漢字項目]

常用漢字] [音](ヰ)(呉)(漢) [訓]なぐさめる なぐさむ
相手の気持ちをいたわり落ち着かせる。「慰安慰撫いぶ慰問慰留慰霊慰労自慰弔慰
[名のり]のり・やす

なぐさ【慰】

心を慰めるもの。なぐさめ。
あれのみそ君には恋ふる我が背子が恋ふと言ふことはことの―そ」〈・六五六〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「慰」の意味・読み・例文・類語

なぐさ・む【慰】

[1] 〘自マ五(四)〙
① 心がなごやかに静まる。心が晴れる。気がまぎれる。
万葉(8C後)一一・二五六七「相見ては恋名草六(ナぐさム)と人はいへど見て後にそも恋ひまさりける」
② 楽しんであそぶ。
※虎明本狂言・萩大名(室町末‐近世初)「此間は何方へもゆさんにまいらぬほどに、今日は罷出てなぐさまばやと存る」
[2] 〘他マ五(四)〙
① 心を楽しませる。心を晴らす。気をまぎらせる。
書紀(720)継体八年正月(寛文版訓)「安(いつくん)ぞ空爾(むな)しとして答慰(ナクサム)こと無けむ」
② 他人の心をもてあそぶ。からかって楽しむ。おもちゃにする。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「病み上り日本の人になぐさまれ」
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)四「たんと買うつらをして、なぐさんでやらう」
③ 女をもてあそぶ。なぐさみものにする。犯して楽しむ。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)三「此としよりをなぐさんで、今にげることはござらぬ」
[3] 〘他マ下二〙 ⇒なぐさめる(慰)

なぐさみ【慰】

〘名〙 (動詞「なぐさむ(慰)」の連用形の名詞化)
① 人の心がなごやかに静まるようなもの。気ばらしになるもの。なぐさめ。なぐさび。
※寛元本和泉式部日記(11C前)「つれづれもなくさみに思ひたちつるを、さらばいかにせましと思ひみだれてきこゆ」
② たのしみ。娯楽
※波形本狂言・雁礫(室町末‐近世初)「誠に世になくさみは多けれども、鳥をいて遊ぶほど面白ゐ物はござらぬ」
③ なぶりもの。玩弄物。もてあそび。
※虎寛本狂言・不聞座頭(室町末‐近世初)「扨も扨も、目の見へぬ者は浅ましい者じゃ。〈略〉扨々能慰じゃ」
④ 女をもてあそび犯すこと。
浮世草子・好色一代女(1686)一「太鞁持(たいこもち)坊主を西国衆(さいこくしゅ)に仕立、京中の見せ女を集め、慰(ナグサミ)にせられける」
ばくち。てなぐさみ。
※雑俳・あかねうら(1772頃)「博奕(ナクサミ)に見るめ忍ぶの裏座敷

なぐさ・める【慰】

〘他マ下一〙 なぐさ・む 〘他マ下二〙
① 心をなごやかに静まらせる。心を晴らす。気をまぎらせる。
※万葉(8C後)六・九六三「吾が恋ひの 千重の一重も 奈具佐米(ナグサメ)なくに」
古今(905‐914)仮名序「をとこ女のなかをもやはらげ、たけきもののふのこころをも、なぐさむるは歌なり」
② なだめる。なだめすかす。
源氏(1001‐14頃)葵「日ひとひ、いりゐてなくさめ聞え給へど、とけがたき御気色いとどらうたげなり」
③ 労をねぎらう。いたわる。
※浮世草子・好色五人女(1686)二「何国(いづく)迄もまいりて、下向には京へ寄て四五日もなくさめ」

い‐・する ヰ‥【慰】

〘他サ変〙 ゐ・す 〘他サ変〙 なぐさめる。いたわりねぎらう。心を落ち着かせる。
太平記(14C後)二六「叡慮先憤を慰(イ)する条、累代の武功返返(かへすがへす)も神妙(しんべう)也」
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一三「請ふ暫らく憩ふて長途の労を慰せよ」

なぐさもる【慰】

(下二段動詞「なぐさむ(慰)」の連体形「なぐさむる」の変化したもの) =なぐさめる(慰)
※万葉(8C後)一一・二五七一「ますらをは友のさわきに名草溢(なぐさもる)心もあるらむ我れそ苦しき」

なぐさ【慰】

〘名〙 人の心をなごやかに静まらせるもの。気をまぎらわせるもの。なぐさみ。なぐさめ。
※万葉(8C後)四・六五六「吾れのみそ君には恋ふる吾が背子が恋ふとふことは言(こと)の名具左(ナグサ)そ」

い‐・す ヰ‥【慰】

〘他サ変〙 ⇒いする(慰)

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