戦争と平和の法(読み)せんそうとへいわのほう(英語表記)De jure belli ac pacis

改訂新版 世界大百科事典 「戦争と平和の法」の意味・わかりやすい解説

戦争と平和の法 (せんそうとへいわのほう)
De jure belli ac pacis

国際法の父〉と呼ばれるグロティウスが,1625年亡命先のパリで出版した国際法に関する彼の主著正戦論立場に立って,戦争禁止制限許容について,また,戦争中に守られるべき規則について詳細に論じた。これに関連して,彼は,国際法全般の問題をとり上げ,国際法を体系づけようとした。本書は今日までの国際法の発展に大きな影響を与えた国際法学上もっとも重要な書物である。ラテン語で書かれており,その後多数の版を重ね,英語,フランス語,ドイツ語はもとより,中国語,日本語にも翻訳され,広く読まれてきた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦争と平和の法」の意味・わかりやすい解説

戦争と平和の法
せんそうとへいわのほう
De jure belli ac pacis ラテン語

グロティウス(1583―1645)の代表的著作。国際法に関する初めての体系的著作で、1625年にラテン語で出版された。全3巻で、第1巻では、戦争には正当な戦争と不正な戦争があることを主張し、第2巻では、戦争の正当原因を明らかにするためさまざまな私権を論じ、第3巻では、正当な戦争方法や戦争終結の方法などを論じている。本書の発行により、グロティウスは「国際法の父」とよばれるようになったが、グロティウスの意図は、当時行われていた宗教戦争の悲惨さを緩和するために、人間の理性に基づいた普遍人類法の存在を証明することにあり、主権国家を構成単位とする近代国際法に比べると、なお中世的性格を残している。

[松田竹男]

『一又正雄訳『戦争と平和の法』全三巻(1950~51・巌松堂)』

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「戦争と平和の法」の解説

『戦争と平和の法』(せんそうとへいわのほう)
De jure belli ac pacis

グロティウスの主著,1625年刊。三十年戦争惨禍をみた著者は,自然法を基礎にして人類の平和のために軍人為政者を規制する正義の法があることを説き,初めて国際法を提唱した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「戦争と平和の法」の解説

戦争と平和の法
せんそうとへいわのほう
De jure belli ac pacis

オランダの法学者グロティウスの著書
1625年刊。国際法を自然法によって基礎づけ,近代国際法を確立した名著。

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世界大百科事典(旧版)内の戦争と平和の法の言及

【グロティウス】より

…この幽閉中に《キリスト教の真理》(1627)と《オランダ法学入門》(1631)が書かれた。21年書物運搬用の箱に身をひそめて劇的な脱走に成功し,フランスに亡命してフランス王の保護を受け約10年間フランスに滞在し,その間主著《戦争と平和の法De jure belli ac pacis》(1625)を完成している。31年から数年間オランダ,ドイツを流浪しているが,35年スウェーデン女王により駐仏大使に任用され,ふたたびパリに帰っている。…

【グロティウス】より

…この幽閉中に《キリスト教の真理》(1627)と《オランダ法学入門》(1631)が書かれた。21年書物運搬用の箱に身をひそめて劇的な脱走に成功し,フランスに亡命してフランス王の保護を受け約10年間フランスに滞在し,その間主著《戦争と平和の法De jure belli ac pacis》(1625)を完成している。31年から数年間オランダ,ドイツを流浪しているが,35年スウェーデン女王により駐仏大使に任用され,ふたたびパリに帰っている。…

【ゲンティリス】より

…主著《戦争法論De jure belli》(1598)は,それまで神学の課題として説かれてきた正当戦争論を純粋に法学の課題として取り上げ,文献や歴史的事実に基づき,帰納的に論証した点が大きな特徴とされる。〈国際法の父〉といわれるオランダのグロティウスの主著《戦争と平和の法》は,本書の焼直しにすぎず,したがってゲンティリスこそ真の〈国際法の父〉であると主張する者が,イタリアにはとくに多い。《外交使節論》《スペイン弁護論》も有名。…

【国際法】より


[近代国際法の形成]
 こうした先行する国家慣行や先駆的学者の活躍を土台にして,17世紀前半に,近代国際法は,その基礎を確立した。すなわち,理論上では,オランダのグロティウスが《自由海論》(1609)や《戦争と平和の法》(1625)などの著作を通じて国際法理論を体系化した。こうした業績により,グロティウスは〈国際法の父〉と呼ばれるようになった。…

※「戦争と平和の法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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