扁桃肥大(読み)へんとうひだい(英語表記)Enlarged tonsil

精選版 日本国語大辞典 「扁桃肥大」の意味・読み・例文・類語

へんとう‐ひだい ヘンタウ‥【扁桃肥大】

〘名〙 扁桃が大きくなった状態。生理的なものと病気のものがある。一四~一五歳以降になっても肥大しているもの、ことに表面に凹凸の著しいものは病気である。扁桃腺肥大

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デジタル大辞泉 「扁桃肥大」の意味・読み・例文・類語

へんとう‐ひだい〔ヘンタウ‐〕【×扁桃肥大】

扁桃が異常に大きくなった状態。はれてのどが狭くなり、ひどくなると呼吸困難や嚥下えんげ発声障害などを起こす場合もある。扁桃腺肥大。

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六訂版 家庭医学大全科 「扁桃肥大」の解説

扁桃肥大
へんとうひだい
Enlarged tonsil
(のどの病気)

どんな病気か

 一般的に扁桃腺と呼ばれているのは、のどちんこ(口蓋垂(こうがいすい))の両側に見える口蓋扁桃(こうがいへんとう)図12)が代表的なものですが、そのほか鼻の奥にある咽頭扁桃(いんとうへんとう)アデノイド)、耳管扁桃(じかんへんとう)舌根扁桃(ぜつこんへんとう)などがあります(図13)。

 これらの扁桃が、通常よりも大きくなった状態を扁桃肥大といいます。

 これらの扁桃は、鼻とのどに輪をつくるように存在しています。外界からの病原体に対する免疫を産生していることから、防御機能を果たしていると考えられています。

 最も大きなものが口蓋扁桃で、クルミのような外観のなかには10~20本程度のトンネルがあり、広い表面積(295㎠)を有して、外界からの刺激や情報を受け入れやすい構造になっています。しかし、このように内部が複雑に入り組んだ構造が、かえって細菌感染を助長する原因になることがあります。

原因は何か

 扁桃は、生まれた時には痕跡(こんせき)程度ですが、さまざまな外からの刺激により活発な免疫反応が起こって肥大すると考えられています。

 口蓋扁桃、咽頭扁桃は、母体からの免疫が薄れる1歳すぎから相前後して生理的に大きさを増します。口蓋扁桃は2~3歳ころより肥大が始まり、7~8歳で最大になり、9~10歳ころには自然に小さくなります。咽頭扁桃は、口蓋扁桃より1~2年先行して大きくなり、6~7歳ころに肥大のピークがあります。

 扁桃は、学童期後半に次第に小さくなりますが、肥大の程度、経過は個人差が大きく、時に大人になっても肥大が持続することがあります。たとえば、舌根扁桃は20~30歳にかけて肥大します。女性では肥大が早期に出現し、男性に比べて舌根扁桃肥大がよくみられます。

症状の現れ方

 扁桃肥大は、直接に気道(鼻から肺までの空気通り道)を狭くすることから、いびき睡眠時無呼吸(すいみんじむこきゅう)症候群を起こすことがあります。また、口蓋扁桃が大きすぎると、食事の際に嚥下(えんげ)障害を起こすことがあります。

検査と診断

 口蓋扁桃肥大の程度は次のように分けられます。

・1度肥大:わずかに突出する場合。

・2度肥大:1度と3度の中間

・3度肥大:扁桃が互いに接するほどの場合。

埋没性(まいぼつせい)肥大:組織のなかに埋もれて見えないが、実は肥大している場合。

治療の方法

 急性に肥大した場合であれば、薬物投与で改善することがあります。ただ、長期間にわたり肥大、閉塞(へいそく)症状が持続するようなら、扁桃を手術摘出する必要があります。

宮崎 総一郎, 本田 耕平


扁桃肥大
へんとうひだい
Tonsillar hypertrophy
(子どもの病気)

 咽頭粘膜下(いんとうねんまくか)には多数のリンパ節小胞が分布しており、これらが集まったものを扁桃といいます。咽頭扁桃(いんとうへんとう)耳管扁桃(じかんへんとう)口蓋扁桃(こうがいへんとう)舌扁桃(ぜつへんとう)などがあり、口蓋扁桃はのどの奥、左右両側にあります。一般的には、口蓋扁桃の大きい場合を扁桃肥大といいます。

 口蓋扁桃は2~3歳より増大し、4~5歳より急速に増大し、7~8歳で最大となり、以後は小さくなっていきます。もともと扁桃が大きい時期があるので、大きいというだけでは治療の対象にはなりません。大きいために何らかの症状がある場合に治療の対象となります。

 ほとんどの場合、口蓋扁桃肥大からの症状はありませんが、口蓋扁桃は空気や食物が通る所にあるため、症状としては口蓋扁桃が気道を狭窄(きょうさく)するために起こるいびきや睡眠時の無呼吸、食物の通過障害があります。睡眠時の無呼吸がある場合には治療の対象となります(睡眠時無呼吸といびき)。

坂井 貴胤

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改訂新版 世界大百科事典 「扁桃肥大」の意味・わかりやすい解説

扁桃肥大 (へんとうひだい)
tonsillar hypertrophy

慢性肥大性扁桃炎のこと。免疫臓器の一種である扁桃は,リンパ網様組織によって構成され,生まれて間もなく,外界の細菌などの洗礼を受ける。そこで,抗体を急いでつくらなければならない幼小児期(胎生期において母体からもらった抗体が切れる1歳前後から)において,扁桃組織の増殖が要求され,扁桃が大きくなる。アデノイドなどの扁桃組織も同じことであるが,アデノイドの最も大きい年齢は3~4歳であり,扁桃は少し遅れて6~7歳が最も大きくなる。したがって,単に扁桃やアデノイドが大きいというだけで悪い扁桃と決めつけ,手術を施すわけではない。しかし,炎症がたび重なり,扁桃の肥大がひどくなると構音・摂食障害をおこし,また習慣性アンギーナで高熱,咽頭痛でたびたび実生活がおびやかされたり,腎炎やリウマチなどの2次疾患(病巣感染)をおこしたりするときには,有益な免疫機能以上に生体に害を与えるので手術で摘出しなければいけない。なお,成人とくに男子における偏側の扁桃肥大には扁桃癌や肉腫などの悪性腫瘍の場合があるので注意を要する。
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百科事典マイペディア 「扁桃肥大」の意味・わかりやすい解説

扁桃肥大【へんとうひだい】

扁桃(口蓋扁桃)の肥大した状態。軟性肥大と硬性肥大とがある。前者は学童時の生理的肥大にみられる。後者は扁桃炎の反復や慢性化によるもので表面に凹凸を示す。単なる肥大は手術の対象にならないが,呼吸や嚥下(えんげ)に著しい障害をきたす場合や,炎症を繰り返して腎炎心内膜炎リウマチなどを起こす場合は,部分的切除または全扁桃の摘出を行う。なお咽頭(いんとう)扁桃の肥大症はアデノイドと呼ばれる。
→関連項目睡眠時無呼吸症候群

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「扁桃肥大」の意味・わかりやすい解説

扁桃肥大
へんとうひだい

扁桃が大きくなった状態をいう。扁桃がもつ感染防御と免疫機能は、とくに乳幼児において重要である。その機能が旺盛(おうせい)になると、扁桃は大きくなる。これを機能性肥大といい、生理的な正常の状態である。一方、病的な扁桃炎を繰り返すと扁桃が肥大する。この二つはまったく正反対の意味をもっているので、とくに注意する必要がある。

 機能性肥大の場合は、扁桃の表面が平滑であり、淡赤色で軟らかいので軟性肥大ともいう。これに対して病的な肥大では、表面に凹凸があり、やや白赤色で硬いので硬性肥大という。しかし、軟性肥大でも扁桃炎のように病的なこともある。また、咽頭(いんとう)扁桃の場合は位置が特殊で、高度の肥大が他の病態を誘発することもあり、これをアデノイドという。

[河村正三]


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