手当(読み)てあて

精選版 日本国語大辞典 「手当」の意味・読み・例文・類語

て‐あて【手当】

〘名〙
① (━する) あらかじめその用に備えること。また、そのために配置される人。用意。準備。
※玉塵抄(1563)三六「太宗の曰我勣を并州の守護にないて北方のえびすの手あてにをしむけてをいたれば」
滑稽本・八笑人(1820‐49)三上「又跡でお茶漬でもお上りなさる手当(テアテ)には〈略〉これに煮染(にしめ)がござります」
② (━する) 算段すること。工面すること。
※魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「養父(ちち)から貰ふ学資の他には、何処から手配(テアテ)する当も無い人で」
③ てだて。方法。手段。
④ 仕事の報酬としての金品。手当金。
※御触書天保集成‐八六・寛政四年(1792)閏二月「支配向少給之もの共え、御手当且風儀取直、正道競ひ候様にとの儀に付」
※妾の半生涯(1904)〈福田英子〉三「其処此処に宿泊せしめ置きたる壮士の手当てを如何にせんとの先決問題起り」
心付けの金品を与えること。また、その金品。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「内証で手当(テアテ)もしたらうのさ」
⑥ 支払いに用意する金銭。費用。
※人情本・風俗粋好伝(1825)前「今は、尾羽うち枯らして、妻子を養育むべき手当(テアテ)も薄く」
⑦ (━する) もてなすこと。馳走。はからい。あつかい方。
※歌舞伎・鏡山錦栬葉(加賀騒動)(1879)四幕「厚い手当(テアテ)に与るより内へ帰って楽々と、身分相応麦飯の茶漬を喰ふのが楽しみだ」
⑧ (━する) けがや病気などの処置を施すこと。また、その処置。
※人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)初「医療の手当(テアテ)を尽すと云へども、次第々々に弱り行き」
⑨ 必要な世話をすること。
文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初「草木に培養の手当(テアテ)をよくして、成木繁茂する様なものて」
⑩ 捕方・警察の捜索。また、召取り。捕縛。逮捕。
※牧民金鑑‐一・安永六年(1777)八月(古事類苑・法律五六)「初判差出文段疑敷迄に而候はば、手当に不及、初判差出候積、評議相済」
⑪ 基本賃金ほかに支給する賃金。家族手当・年末手当・職務手当・住宅手当通勤手当など。
⑫ 取引市場での清算取引で、受け渡しする品物を準備すること。

て‐あたり【手当】

〘名〙
① 手にさわること。手でさぐること。手さぐり。また、その感触。手ざわり。
落窪(10C後)四「手あたりけはひなどのをかしければ、うれしと思ひけり」
② 手ぢか。手もと。手にあたる程の所。
③ 扱い。応対。人あたり。〔日葡辞書(1603‐04)〕
④ 手ごたえ。手がかり。
※歌舞伎・善悪両面児手柏(妲妃のお百)(1867)二幕「声の嗄れる程呼んで歩いても、ちっとも手当(テアタ)りのないには」
⑤ 鼓のうち方。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・誹諧独吟集(1666)下「昨日よりけふは頭のいたみいで さらに皷(つづみ)のならぬ手あたり〈幸和〉」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉六「聖書をひき出し〈略〉手当(テアタリ)にひきあけて、其頁の初一句を読むと」

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デジタル大辞泉 「手当」の意味・読み・例文・類語

て‐あて【手当(て)】

[名](スル)
ある物事を予測して用意しておくこと。準備。「資金の手当てがつく」
病気やけがの処置を施すこと。また、その処置。「病院で手当てを受ける」「傷口を手当てする」
労働の報酬として支払われる金銭。「看護人の一か月の手当て
基本の賃金のほかに諸費用として支払われる金銭。「単身赴任に手当てがつく」「家族手当て
心付け。祝儀。チップ。「手当てをはずむ」
犯人・罪人のめしとり。捕縛。
「明日が日、おれが―になり」〈伎・島鵆月白浪
[類語](1用意支度したく準備備え設け手配手配り手回し手筈てはず段取りぜん立て道具立て下拵したごしら下準備態勢整備備える前前かねてかねがね何時かこれまで従来従前し方先年当年一時一頃その節先に当時古来あらかじめ年来旧来在来その昔前以て先立ってかつてすでに見越し先刻早め根回し早手回し手を回す地固めなら布石事前先手下見予習伏線つとにとうにとっく示し合わせる言い合わせる申し合わせる打ち合わせる口裏を合わせる/(2治療診療加療療治手術施療/(3報酬ギャラ

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百科事典マイペディア 「手当」の意味・わかりやすい解説

手当【てあて】

基本給に付加して支払われる賃金。退職金等の算定基準からは除かれる。役付手当,特殊作業手当など特定種類の労働に支払われるもの,家族手当,通勤手当,住宅手当など生活補助的なもの,超過勤務手当,精勤手当など労働刺激的なものに大別。日本の賃金体系では一般に手当部分の比率が高く,基本給が低い。なおボーナスを手当ということもある。
→関連項目賃金体系

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