手旗信号(読み)てばたしんごう

精選版 日本国語大辞典 「手旗信号」の意味・読み・例文・類語

てばた‐しんごう ‥シンガウ【手旗信号】

〘名〙 旗信号一つ。陸上または船上で、右手に赤、左手に白の小旗を持ち、これを振り動かしてつくる体形の組合せで、遠くにいる相手に通信する。手旗
愛弟通信(1894‐95)〈国木田独歩〉大連湾雑信「彼の艦上には頻りに手旗信号(テバタシンガウ)を試みつつあるなり」

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デジタル大辞泉 「手旗信号」の意味・読み・例文・類語

てばた‐しんごう〔‐シンガウ〕【手旗信号】

右手に赤色、左手に白色の小旗を持ち、これを振り動かして遠くにいる相手に通信する信号。

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改訂新版 世界大百科事典 「手旗信号」の意味・わかりやすい解説

手旗信号 (てばたしんごう)

左右両手に持った方形の旗と身体とによって定められた形象を示して通信する方法。視認できる範囲でのもっとも簡単な交信方法といえる。旗を通信手段として用いること自体は古くから行われていたと思われるが,旗と身体とによってつくられる一定の形象で,文字あるいはモールス符号を示す現在のような手旗信号が使用されるようになったのは19世紀に入ってからのことである。現在,日本で使用されている手旗信号は,国際信号書によるものと〈日本船舶信号法〉によるものとの2方式に大別される。

 国際信号書によるものにはセマホアsemaphore信号法とモールス信号法があり,両方法とも同色の2枚の手旗によるが,使用する形象と交信法は異なっている。セマホア法ではアルファベット26文字と交信に必要な2個の記号との計28個の形象が,両手旗の位置関係で表され,それをもって平文(話言葉)で交信する。送信速度は1語5字として毎分8語ないし12語が適当とされている。この方法は,18世紀の終りフランスで陸上間の通信に,柱につけた腕木の傾きを利用したのがそもそもの始まりで,現在でも旗の代わりに腕木を用いる場合もある(字の表示方法は同じ)。モールス法では使用する形象は5個であるが,各語あるいは符号の各文字,数字を,短符と長符との組合せでできているモールス符号に置き換えて送信する。やむをえない場合は,徒手あるいは片手で送信してもよい。送信は平文とも国際信号書の符号とも規定はないが,これはモールス法がとくに緊急な場面で意志疎通を図るための交信手段となることを想定したことによる。

 〈日本船舶信号法〉によるものは,左手に白色手旗,右手に赤色手旗を持って交信する。かたかなを1~3個の形象(原画という)によって表すもので,受信者側から見てだいたいかたかなに近い形が描かれるので,日本人にとってはわかりやすい(図)。平文で交信され,送信速度は毎分55字が標準である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「手旗信号」の意味・わかりやすい解説

手旗信号
てばたしんごう
signalling by hand-flags or arms

通信法の一種。両手に旗を持って直立し、旗をあげて形づくった形象によって文字を相手方に伝え、互いに意志の伝達を行う方式の信号法。和文通信に適した日本船舶信号法と、国際的にローマ字またはモールス符号を送って通信しあう国際信号法とがある。電波や光による通信法が発達した現在でも、遭難などの最悪状態においては最後の手段として役にたつことから、公式に通信手段として採用されている。このため、旗を持たずに手だけでも実施しうることになっている。

 日本・国際とも信号法としては、(1)呼出し、(2)応信、(3)送信、(4)消信、(5)終信の方式で行う。ただしその方法は同一ではない。日本方式の送信は、相手方から見て片仮名の文字が書かれるのを読む形で行われる。たとえば「イ」を送る場合には、第一挙動で「ノ」の形をとり、第二挙動で「|」の形をとる。また「キ」を送るには「=」と「|」を組み合わせるというような方法がとられる。これに対して国際方式には、ローマ字を平文で送る方式とモールス方式の2種類がある。後者はいわゆるトン・ツーの符号を送るもので、手旗としてはトン(短符)とツー(長符)の二つの形だけですむが、送受信者ともモールス符号を知っている必要がある。またローマ字を平文で送る方式では、ローマ字全部の形象を互いに知っていなければならない。これをセマフォア信号ともいい、人間が形象をとるかわりに腕板二枚でも同じ形象をとることができる。

[茂在寅男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「手旗信号」の意味・わかりやすい解説

手旗信号
てばたしんごう
semaphore flag signals

一定の手旗 (赤と白) と両腕を動かして符号を伝達する近距離の通信法。セマホア信号 (英文) と和文手旗信号とがある。前者は,1934年以来,国際通信書信号編で定められており,後者は日本船舶手旗信号法によって規定されている。日本では前者を欧文手旗信号と呼ぶ。手旗信号を行う場合には,まず見やすいところに国際信号旗「J」を掲げ,相手は回答旗を半揚したのち,受信準備ができたら全揚する。セマホア信号では,数字の1から0までをアルファベットの初めの 10字を使って表わし,数字を送る前にその旨を信号する。和文手旗信号は,45のかたかなを形象化し,長音,濁音,半濁音,かっこ,句点などを定めている。各形象ごとに左右に旗を降ろした原姿に戻り,次の形象をつくる。右に赤,左に白の手旗を持ち,1分間に 55字送信するのが標準速度である。

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百科事典マイペディア 「手旗信号」の意味・わかりやすい解説

手旗信号【てばたしんごう】

両手に持った2本の小旗で特定の形象を描いて文字を示す通信法。艦船などで使用。和文信号と欧文信号があり,後者では腕木装置によるマセホア信号も含める。和文信号の基本は原画形象,交信区別形象,記号形象で,文字は原画形象を組み合わせ手旗と身体で片仮名の裏字を描く。
→関連項目信号はた(旗/幢/幡/旌)

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