(読み)しごく

精選版 日本国語大辞典 「扱」の意味・読み・例文・類語

しご・く【扱】

〘他カ五(四)〙
① 細長い物を、手の中ににぎりしめたり指で強くはさんだりしたまま、その手や指を、こするように移動させる。こく。〔文明本節用集(室町中)〕
日葡辞書(1603‐04)「Xigoqi, u, oita(シゴク)〈訳〉連なった穂先穀粒指先で引き抜く」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三「長髯を綽(シゴ)いて居た」
② いじめつける。
浄瑠璃新版歌祭文お染久松)(1780)油屋「ムムこりゃ理屈じゃ。そんならこいつもふしごいて仕廻はにゃならぬ」
③ (比喩的に) きびしく訓練する。「新入部員をしごく」
チンネの裁き(1959)〈新田次郎〉三「しごかないリーダーなんてありますか」

こ・く【扱】

〘他カ五(四)〙
① 細長い本体に付いているものを、手でこすったりして、むりに離し落とす。また、草木を根のついたまま引き抜くこともいう。むしり取る。しごく。後には、単にこすることをもいう。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※枕(10C終)九九「稲といふものをとり出でて〈略〉五六人してこかせ」
※黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一「土屋伯は、頻(しきり)に鬚(ひげ)を綽(コ)いて居る」
② 力や技をふるう。→腕をこく。〔文明本節用集(室町中)〕
③ 打つ。たたく。なぐる。
※応永本論語抄(1420)里仁第四「漢の伯瑜が母の若き時、枝を以てこかれたれば」

しごき【扱】

〘名〙 (動詞「しごく(扱)」の連用形名詞化)
① 手などでにぎりしめて引くこと。
② きびしく鍛えること。きびしい訓練。
新西洋事情(1975)〈深田祐介間接統治に栄光あれ「ひとり十人もの先輩に立ち向い徹底的なしごきを受けねばなりません」
③ 「しごきおび(扱帯)」の略。
洒落本辰巳之園(1770)「お長はしごきのなりにて出る」

あつかわあつかはし【扱】

〘形シク〙 (動詞「あつかう(扱)」の形容詞化) 事の処置に苦労する。取り扱いにくい。
※源氏(1001‐14頃)総角「『いとかくくち木にはなしはてずもがな』と、人知れず、あつかはしくおぼえ侍れど」
あつかわし‐げ
〘形動〙

こ・ぐ【扱】

〘他ガ四〙 動詞「こく(扱)」の活用語尾が濁音化したもの。
※日葡辞書(1603‐04)「Cogui, u, oida(コグ)〈訳〉コクという方がまさる。麻の皮を剥ぐ、または、稲穂から穀粒を落とす。シモの語」

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改訂新版 世界大百科事典 「扱」の意味・わかりやすい解説

扱 (しごき)

扱帯の略。しごいて締めるところから名付けられた。江戸時代,対丈(ついたけ)であった女物の小袖の丈が長くなるにつれ,腰の部分をたくしあげて歩きやすいように固定するために用いられ,抱帯(かかえおび)ともいった。明治以降,お端折(はしより)をする着方に変わると,腰紐を使うようになり,礼装用の装飾としてのみ残った。現在では,抱帯は錦地などの平絎(ひらぐけ)帯をいい,花嫁衣装の掛下着に用いられる。扱は赤,黄,緑などの綸子(りんず)やちりめんで同色の房飾がついたものをいい,花嫁衣装の振袖の帯や,七歳児の祝着の帯の下側に畳んだ扱を巻いて左後腰で結ぶ。江戸時代,その前身が手拭と思われる三尺帯も,当初しごいて締めるところから扱帯と呼ばれた。長さが一回り3尺で職人などから始まったが,6尺となっても三尺帯と呼び,現在は子ども物の帯として残っている。
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百科事典マイペディア 「扱」の意味・わかりやすい解説

扱【しごき】

扱帯の略。普通の帯のように仕立てずに1枚の布地をしごいて用いる帯。着物の丈が長かった江戸時代には,外出の際着物をたくしあげるため用い,かかえ帯とも称したが,現在では装飾用となり,七五三の衣装や花嫁衣装などで締めた帯の下方につけて左側で結び下げる。縮緬(ちりめん),羽二重などで無地が多い。

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