批判的実在論(読み)ひはんてきじつざいろん(英語表記)critical realism

精選版 日本国語大辞典 「批判的実在論」の意味・読み・例文・類語

ひはんてき‐じつざいろん【批判的実在論】

〘名〙 (critical realism訳語) 人間知覚から独立な客観的世界存在を肯定するが、認識の中に含まれているすべてのものが客観的であるとは認めない、認識論上の立場一つ。第一次世界大戦後の時代に唱えられた。狭義には「新実在論」に対して、客観的存在を直接認識できないが、存在を指示している与件などの媒介によってできるとする立場。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「批判的実在論」の意味・わかりやすい解説

批判的実在論
ひはんてきじつざいろん
critical realism

アメリカの哲学者 R.セラーズが 1916年に出版した著作の表題,および彼の見解を支持した D.ドレイク,A.ラブジョイ,G.サンタヤナらアメリカ人哲学者グループの認識論上の立場。認識主観とは独立に実在の世界を認め,それが認識に際して主観に直接に提示されるとした R.ペリーらの新実在論を修正して,実在の世界がそのまま主観に与えられるのではなく,直接に知られるのは知覚与件としての性質複合であって,われわれはそれに対応する実在物の存在を信じるのであるとし,認識に際しての「誤謬」の事実を説明した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「批判的実在論」の意味・わかりやすい解説

批判的実在論
ひはんてきじつざいろん
critical realism

広くは19世紀の観念論的傾向に対し、同世紀末から20世紀にかけて生まれた実在論の傾向をいい、ドイツリールやユーベルベーク、イギリススコットランド常識学派ケンブリッジ分析学派などを含む。狭くは、イギリスのヒックス、とくに『批判的実在論論集』(1920)を共同研究の成果として刊行した7人のアメリカ哲学者(サンタヤーナ、ラブジョイ、ドレーク、プラット、ロジャース、セラーズ、ストロング)らをいう。

[杖下隆英]

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世界大百科事典(旧版)内の批判的実在論の言及

【実在論】より

…しかしものの主観にとっての見え方,現れ方から,ものそれ自身の在り方へと接近しなければならぬ。広義の批判的実在論critical realismは,われわれの知覚し経験したもろもろの像に,たとえば尺度をあてがって測定し計測し,同種のものと比較対照して抽象し捨象するなど,素朴なものの像に修正を加えて間主観的にものの実在性に近接しようとする。実在論の目標がものの実在性の認識であるとすれば,実在性の認識には,ものの側での現れ方とこれを受容し知る主観の側での能力,状態,状況,装置等との共同が必要であり,いくたの試行錯誤を経て,ようやく認識された実在性が真理性を帯びるに至るのである。…

※「批判的実在論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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