投壺(読み)トウコ(英語表記)tóu hú

デジタル大辞泉 「投壺」の意味・読み・例文・類語

とう‐こ【投×壺】

太鼓の胴の形をしたつぼへ矢を投げ入れ、勝負を争う遊び。中国周代に宴会の興として始まり、奈良時代日本に伝わった。江戸時代天明寛政(1781~1801)のころ流行。つぼうち。つぼなげ。

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精選版 日本国語大辞典 「投壺」の意味・読み・例文・類語

とう‐こ【投壺】

〘名〙 中国から伝わった遊戯一つ。奈良時代日本に伝来後世、江戸時代、天明・寛政(一七八一‐一八〇一)の頃に流行したものは、壺をはさんで等距離に向かいあい、その地点から矢を投じて壺へのはいり方や数で点数を争って遊んだ。つぼうち。つぼなげ。〔江吏部集(1010‐11頃)〕 〔礼記‐投壺〕

つぼ‐うち【投壺】

〘名〙 =とうこ(投壺)〔十巻本和名抄(934頃)〕

つぼ‐なげ【投壺】

〘名〙 =とうこ(投壺)〔十巻本和名抄(934頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「投壺」の意味・わかりやすい解説

投壺 (とうこ)
tóu hú

中国古代の宴席での遊戯。一つの壺に主客が交互に矢を投げ入れ,入った矢の数の多少で勝負を決する。その道具も投壺という。《礼記(らいき)》投壺篇には,その公式のやり方が記されている。それによると,投げ手から壺までの距離は矢2本半,矢の長さは室内,堂上,庭などの場所によって異なる。壺の中には小豆を入れて,矢が跳び出さないようにした。競技は1回に交互に4本の矢を投げ,それを3回繰り返し,負けた者は罰酒を飲む。《左氏伝》昭公12年には,晋侯が斉侯をもてなしたときに,投壺を行って,諸侯の頭となることを争った話が見える。《礼記》に見える投壺の遊戯は,いわば君子のみやびやかな遊戯であったわけだが,後代になると曲芸的要素が加わり,かなり変形しながら六朝時代以降,士大夫の間で広範に行われた。《投壺新格》(司馬光)というゲームの規約を網羅した書物があらわれたことにも,その隆盛ぶりがうかがわれる。そして明末にいたって投壺の曲芸ぶりは頂点に達し,以後実際の遊びとしては衰えた。ところで,日本でも古く奈良朝の貴族が遊んだと思われる投壺の道具が正倉院に残っている。しかしその後は投壺に関する記録は残っていない。理由は定かではないが,江戸時代,18世紀後半になって京都を中心に民間で流行したようである。いま《投壺指南》《投壺矢勢図解》などの書物が残っている。
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百科事典マイペディア 「投壺」の意味・わかりやすい解説

投壺【とうこ】

〈つぼうち〉とも。壺(つぼ)の中に矢を投げ入れて,入った矢の数を競う遊戯。壺は口の直径が約15cm以下,左右に耳があるもので,12本の矢を用いる。投げる距離は用いる矢の2倍半。矢の長さは室内,庭などの場所によって異なる。負けた者は罰酒を飲む。中国起源の儀礼的遊戯で,日本では《和名類聚抄》に記述があるが,実際には江戸中期を除いてあまり行われなかったらしい。→投扇興

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普及版 字通 「投壺」の読み・字形・画数・意味

【投壺】とうこ

矢投げ。壺に投げ入れる遊戯。〔史記、滑稽、淳于伝〕男女雜坐し、行酒稽留し、六(りくはく)投壺、相ひ引いて曹(仲間)と爲す。

字通「投」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の投壺の言及

【壺】より

甕(かめ)【佐原 眞】 日本では土器,陶磁器が主であったが,金属・ガラス・木製の壺も伝えられている。正倉院宝物中には狩猟文をあらわした広口無頸の銀壺,細頸に円筒形の耳をもつ鋳銅鍍金の投壺(とうこ)がある。ガラスでは文禰麻呂(ふみのねまろ)の墓(奈良県宇陀郡榛原町)から緑色の瑠璃壺(骨壺)が出土しており,ほかに舎利容器にもガラス製小壺が用いられている。…

※「投壺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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