おさえ‐じ おさへ‥【押字】
〘名〙
①
和歌や
俳諧で、句中に上下
呼応関係を持つ「てにをは」(
助詞・
助動詞)がある場合、上の「てにをは」をいう。「水寒し雪や山より流るらん」の「や」の類。→
押さえる(一)⑤。
※手爾葉大概抄之抄(1483)「
つめはねは、さへ だに ぞ に て 等の押へ字を置てはぬるなり」
※俳諧・
埋木(1656)「にてどまりのをさへ字五つあり。を 水くさき心を人のならひにて」
②
修辞で、
文中に上下呼応関係がある場合、上の語に照応する下の語をいう。「
係り結び」の結びに当たる語。
※評判記・色道大鏡(1678)九「そうじて、こそといふてにはは、下にておさへ字なくては、かかぬものなり」
[語誌](1)①について、
宗祇は「連歌秘伝抄」で「おさへたる手仁葉」として、「ぞ・ば・と・は」の
用例を挙げ、上接語をとりわけて限定するなど強調する字として意識し、付句の手法を選ぶ基準とした。
紹巴の「連歌教訓」には「ぞ・や・か」に「押へ」の解説があり、一句中の呼応に注意が向けられている。
(2)②では、
挙例の「色道大鏡‐九」にあるように、結びの語のほうを指しているが、これは、「おさへ」のもつ最後を締めくくる義からの転用であろう。
おう‐じ アフ‥【押字】
〘名〙
自分の
名乗(なのり)を
草体で書き、あるいは名乗の
一字や吉字を選んで書きくずすなどして模様化し、自分の
サインとしたもの。
花押(かおう)。
※
同文通考(1711‐16)三「異朝のいはゆる押字はをのが名をも字
(あざな)をも用ふ」 〔
宋史‐衛膚敏伝〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「押字」の意味・読み・例文・類語
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普及版 字通
「押字」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典(旧版)内の押字の言及
【花押】より
…記号もしくは符号風の略式の自署(サイン)で,判(はん),書判(かきはん),判形(はんぎよう),押字(おうじ)などともいった。花押の起源は自署の草書体にある。…
【署名】より
…[条約]【岡村 尭】
【歴史】
署名の起源とその変容を,中国とヨーロッパの場合について以下では概観するが,日本については〈[花押]〉の項目を参照されたい。
[中国]
中国では,署字,押字などともいい,文書の作成者あるいは責任者が文書上にその名を自筆で書く。その起源は古く,すでに簡([木簡])に書かれた漢代の公文書では,その末尾または背面に,責任の所在を明らかにするため,必ずその文書を書写した[書記]が署名した。…
※「押字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」