精選版 日本国語大辞典 「拙」の意味・読み・例文・類語
つたな・い【拙】
〘形口〙 つたな・し 〘形ク〙 物事が劣っているさまについて広く用いる。
① 能力が劣るさま。思慮分別に欠けるさま。おろかである。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「智の量り踈かに拙(ツタナク)して報土に生れむと欣ふいは分に越えて望む所なり」
② 品格が劣っているさま。下品である。いやしい。つまらない。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「わがつたなき娘の腹に、むまれ給へねば、かく知られぬ君もあるなり」
※評判記・名女情比(1681)四「さて上にやんごとなき御かたがたをつらねたてまつりて、此巻にして、つたなきうかれめのことまで、書加へ侍る事」
③ 運に恵まれないさま。不運である。不仕合せである。また、薄命であるさま。
※伊勢物語(10C前)六五「宿世つたなくかなしきこと、このをとこにほだされて、とてなん泣きける」
※春寒(1921)〈寺田寅彦〉「武運拙く最後を遂げる船戦の条は」
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一「五者如来の身は、飢渇有ること無く、亦便利羸(やせ)憊(ツタナキ)の相も無し」
⑤ なさけない。遺憾である。残念である。
つたな‐げ
〘形動〙
つたな‐さ
〘名〙
せつ【拙】
[1] 〘名〙 (形動) つたないこと。へたなこと。巧者でないこと。また、そのさま。
※俳諧・猿蓑(1691)跋「卒援レ毫不レ揣レ拙」
※慶長日件録‐慶長九年(1604)一二月二〇日「入レ夜九条殿へ参。拙也、口中腫痛之間、頓退出」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)二「拙(セツ)も遅参に及んではそ(其)の罪また軽からず」
つたな・し【拙】
〘形ク〙 ⇒つたない(拙)
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