(読み)きょうする

精選版 日本国語大辞典 「拱」の意味・読み・例文・類語

きょう‐・する【拱】

〘他サ変〙 きょう・す 〘他サ変〙
① 昔の中国礼法一つ両手を胸の前で重ね合わせる。こまぬく。
談義本・風流志道軒伝(1763)一「立って拱するが礼なりとて」
② とりまく。めぐる。
太平記(14C後)二〇「歘(たちまちに)鸞輿幸南山、衆星拱(ケウス)北極

たんだく【拱】

〘名〙 (動詞「たんだく(拱)」の名詞化多く「たんだくする」の形で用いる)
① 両手を組むこと。こまねくこと。両手を前に合わせて拝礼すること。
※太平記(14C後)四「天上に星有り、皆北に拱(タンタク)す、人間東に朝せずと云こと無し」
② そのものに相対すること。心を向けること。
※歌舞伎・百千鳥鳴門白浪(1797)二「それよりは早、程たえて一心爰にたんだくせうと思へば」

た‐むだ・く【拱】

〘自カ四〙 (「手(た)(むだ)く」の意) 両手を組む。手をこまねいて何もしないでいる。たうだく。たんだく。
万葉(8C後)六・九七三「平らけく 吾は遊ばむ 手抱(たむだき)て 吾はいまさむ」
※大日経義釈延久承保点(1074)「但だ静かに坐して住して手を拱(タムタイ)て罪を待つ」
[補注]「万葉集」の例は「たうだく」と訓む説もある。

こまぬ・く【拱】

〘他カ五(四)〙
① 腕を組む。腕組みをする。
※宇治拾遺(1221頃)五「この人も、いかにと思ひてむかひゐたるほどに、こまぬきて、すこしうつぶしたるやうにてゐられたり」
② なにもしないで見ている。手出しをせずに傍観する。→腕を拱く手を拱く

たんだ・く【拱】

〘自カ四〙 (動詞「たむだく(拱)」の変化した語) 両手を組む。両手を前に合わせて拝礼する。また、中心となるものに対して向かう。→たむだく。〔和玉篇(15C後)〕
※叢書本謡曲・千引(室町末)「人間の水南に流れ、天上の星北にたんだく」

こまね・く【拱】

〘他カ五(四)〙 「こまぬく(拱)」の変化した語。
日本人良心(1949)〈正木ひろしサントニン「現在では医者すら入手難に陥り、手をこまねいて病人衰弱を傍観している有様だ」

た‐うだ・く【拱】

〘自カ四〙 =たむだく(拱)
色葉字類抄(1177‐81)「拱 タウタク」

きょう‐・す【拱】

〘他サ変〙 ⇒きょうする(拱)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「拱」の意味・読み・例文・類語

きょう【拱】[漢字項目]

[音]キョウ(漢) [訓]こまぬく こまねく
両手を胸元で組み合わせる。こまぬく。「拱手垂拱
両手でかかえるほどの太さ。「拱把拱木
アーチ状。「拱門拱廊

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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