振売(読み)ふりうり

精選版 日本国語大辞典 「振売」の意味・読み・例文・類語

ふり‐うり【振売】

〘名〙 物を手に提げたり、担ったりして、その物の名をふれながら売り歩くこと。また、その人。中世から近世にかけて多く行なわれた。触売(ふれうり)
大乗院寺社雑事記‐寛正六年(1465)六月一六日「為材木屋振売事は一向無其例事也」
浄瑠璃心中宵庚申(1722)道行町中をふりうりし」

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改訂新版 世界大百科事典 「振売」の意味・わかりやすい解説

振売 (ふりうり)

店舗を構えたり一定の場所で商売するのでなく,呼売して行商すること,またはその商人をいう。連著,連雀(れんじやく)などともいう。また振売は,特権的営業権を認められた座商人の座売に対する自由かってな商い,すなわち脇売を指すこともあり,立売とも呼ばれ,禁じられる場合もあった。江戸時代には振売は商品を持ち歩いて売ることをいい,せり売とも触売(ふれうり)ともいった。棒手振(ぼてふり)も同義語である。1648年(慶安1)幕府振売札を下付して札所有者にのみ振売を許し,さらに1659年(万治2)振売赦免の業種を定めて振売札を下した。その対象業種は木綿布売,紙帳売,油売,薪売など日用必需品が多く,振売札の下付にあたっては札銭が徴収されることが少なくなかった。江戸時代には店舗商業が主体となったが,農村などではなお振売に依存するところが大きかった。
連雀商人
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「振売」の解説

振売
ふりうり

中世~近世に天秤棒に商品をさげて売り歩いた商い,またその商人。商品を頭上にのせて売り歩く桂女(かつらめ)・大原女(おはらめ)などの女性商人も振売の一種。塩・魚・檜物など扱う商品の大半が店売のものと重複したため,しばしば店売商人との間に訴訟がおきた。振売商人の多くは農村居住者で,新座・里座などとよばれる独自の座を結成していた。近世には連雀(れんじゃく)・棒手振(ぼてふり)などともよばれ,農村部に日用品を供給した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「振売」の意味・わかりやすい解説

振売
ふりうり

棒手振 (ぼてふり) ともいう。店を構えず,町々を商品の名を大声で呼びながら売歩いた行商人。平安時代からあったが,鎌倉,室町時代には,近郊農村から来て商売する者や,社寺の祭礼などの日に門前,境内で商売する者を振売といった。江戸時代には各業種にわたり広く存在した。 (→連雀 )

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旺文社日本史事典 三訂版 「振売」の解説

振売
ふりうり

平安〜江戸時代の呼び売り行商
店舗を持つ棚売・座と異なり,日帰りか1泊ぐらいの範囲で町々を売り歩いた。平安末期から盛んとなり,中世には座の特権を侵すとして圧迫されたが,戦国大名から保護され,江戸時代には免札が与えられた。

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世界大百科事典(旧版)内の振売の言及

【広告】より

…〈広告〉という語は1872年(明治5)ころから新聞に散見され,87年ころから一般に使用されるようになったといわれる。江戸時代の振売(ふりうり)の口上(こうじよう)が引札(ひきふだ)(ちらし)を経て新聞広告などへ発達してきたものである。 広告と同じような意味で用いられている宣伝という語は〈ある主張・商品の効能などを多くの人に説明して,理解・共鳴させ,ひろめること〉(《広辞苑》)とあるように,本来はプロパガンダpropagandaに相当する語である。…

【物売】より

…街頭で商品を売る者のことで,近世には品物を手や肩にかけて移動しながら売り歩く振売と,大道や神社仏閣の境内などに見世(みせ)を出し移動せずに商売する立売とがあった。振売は〈棒手振(ぼてふり)〉ともいい,荷箱や荷ざるに品物を入れ天秤棒(てんびんぼう)で担ぐもの(魚売,酒売,豆腐売など),商品を手で持って売るもの(双六(すごろく)売,宝船売,暦売など),台輪に商品を載せて担ぐもの(桜草売,植木売など),挟み箱を担ぐもの(薬売),市松模様の屋根の屋台で売るもの(虫売),弁慶に差して売るもの(鉢たたき,つくり花売,ほおずき売),傘をさした物売(飴売),品物を入れた箱を背負った物売(筆墨売,羅宇屋(らおや)),箱を肩にかけた物売(お豆さん売),箱を首にかけたもの(だんご売,しゃぼん玉売),引出し付の小箱を手でさげて売りにくるもの(煙草売,歯磨売),品物を頭にのせてくる物売(女の魚売),箱を片方の肩に担ぐもの(鮨売)などがあった。…

※「振売」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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