接待宿(読み)せったいやど

改訂新版 世界大百科事典 「接待宿」の意味・わかりやすい解説

接待宿 (せったいやど)

旅の巡礼修行僧に一般庶民が提供する宿。原則として無料で一夜かぎりだが,年末から年始にかけては年宿といって数日から1ヵ月にわたることもあった。旅をする宗教者への宿の提供は,托鉢に対する喜捨と同じく,この世で善根を積む行為と考えられたので善根宿(ぜんこんやど)ともよばれる。それも単に来世への願いだけでなく,家族の年忌供養とか病気平癒の願いとか,ときには千人宿などの願をたててするなどさまざまな意味あいがこめられていたため,かつてこの風習は非常にさかんであった。ことに四国霊場を巡拝する遍路(へんろ)などは托鉢と接待宿だけで四国を一巡できるほどだったという。宿を恵まれた場合は必ずその家の仏壇に供養し,出立のときは納札を1枚置いていくのがならわしであった。また江戸時代の接待宿には個人で行うもののほか,村内の家々が順番に旅人のための宿をする風習もあり,こうした無料の宿が旅行史に果たした役割はきわめて大きい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「接待宿」の意味・わかりやすい解説

接待宿
せったいやど

善根宿ともいう。四国地方の弘法大師八十八ヵ所の霊場を巡礼するお遍路たちに水や湯茶などをふるまい,無料で宿泊させる宿のこと。

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