すい‐きょ【推挙・吹挙】
〘名〙
① 官途や、ある仕事などにつくように、また、地位などが昇進するように取持つこと。推薦。
吹嘘(すいきょ)。
※本朝麗藻(1010か)下・夏日同賦未飽風月思深字〈
大江以言〉「起
レ家望
レ徳清明影、嗜
レ道猶求
吹挙音」
※
浄瑠璃・
神霊矢口渡(1770)三「
竹沢が
推挙(スイキョ)にて尊氏卿へ官
(みやづかへ)、新に所領賜りて」 〔史記‐韓安国伝〕
②
中世、他人の支配に属している者が自分の名義で訴訟する時に、主人に当たるものが裁判所に対して取り次ぐ旨の
書状を添付すること。
挙状。
※
吾妻鏡‐建長二年(1250)四月二九日「雑人訴訟事〈略〉鎌倉中者、就
二地主吹挙
一、可
レ申
二子細
一、無
二其儀
一者、不
レ可
レ用
二直訴
一之由」
③ よいものとして人に勧めること。〔英和外交商業字彙(1900)〕
※
佐藤春夫による文学論(1958)〈中村真一郎〉八「氏は〈略〉若い作家志望者に向って、『
古人の所謂文章三多の法』を推挙している」
[語誌](1)「弘治二年本節用集」「永祿二年本節用集」「堯空本節用集」「和漢通用集」などの、いわゆる印度本類節用集には「吹挙」「吹嘘」「推挙」の三表記が併挙されている。「吹嘘」は
中古によく使用され、中世になると「吹挙」が普通となる。「推挙」は中世後期以降増え、
近世では「吹挙」と併用された。「推挙」に定着したのは明治後半のようである。
(2)「吹嘘」は、
本来は、息を吹きかける意であったが、
中国では、推薦する意もあった。
両義とも
日本に伝来し、
意味の
混乱を避けるためか、次第に「吹挙」が使用されるようになった。→
すいきょ(吹嘘)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報