提婆達多(読み)だいばだった

精選版 日本国語大辞典 「提婆達多」の意味・読み・例文・類語

だいばだった【提婆達多】

(Devadatta の音訳。略して「提婆」、意訳して「天授」とも) 仏教の開祖釈迦のいとこ。出家前の釈迦の競争相手で、釈迦が出家し悟りを開いて以後、その弟子となったが、のち離反し、阿闍世王と結んで仏教教団に対抗したという。仏典では生きながら地獄におちた極悪人とされるが、仏教から分立した禁欲主義的な宗教運動の組織者としての一面をもつ。調達(じょうだつ)

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デジタル大辞泉 「提婆達多」の意味・読み・例文・類語

だいばだった【提婆達多】

《〈梵〉Devadattaの音写釈迦従兄。釈迦の弟子となったが、のちに背き、阿闍世あじゃせ王をそそのかして師を殺害しようとして失敗。天授。
《「デーバダッタ」と読む》中勘助小説。大正10年(1921)、那珂筆名刊行主人公に、嫉妬に狂う愚かな人間の悲哀を描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「提婆達多」の意味・わかりやすい解説

提婆達多
だいばだった

生没年不詳。ゴータマ・ブッダ(釈迦(しゃか))と同時代の仏教の異端者。原名デーバダッタDevadattaの音写語で、略して提婆(だいば)といい、また調達(じょうだつ)あるいは天授(てんじゅ)と訳す。ブッダ従兄弟(いとこ)または義兄弟といわれ、出家してブッダの弟子となったが、のちブッダに反逆し、仏教教団の分裂を図った。マガダ国アジャータシャトル阿闍世(あじゃせ))王子を唆し、父王を殺させて王位につかせ、自らはブッダを殺害しようとしたが失敗し、やがて悶死(もんし)したという。厳格な生活法を主張したらしく、提婆達多の教えに従う徒衆が後代にも存続したと伝える。

[藤田宏達 2016年12月12日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「提婆達多」の意味・わかりやすい解説

提婆達多
だいばだった
Devadatta

前4世紀頃のインド人。提婆ともいう。仏伝によると,釈尊(→釈迦)のいとこ。釈尊の青年時代にヤショーダラー姫(→耶輸陀羅)を妻として迎えるために,釈尊と争って敗れる。のち釈尊が悟りを得てとなったとき,釈尊の力をねたんで,阿闍世王(→アジャータシャトル)と結託して釈尊を亡き者にしようとたくらむ。その罪のゆえに生きながら地獄に堕ちたといわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の提婆達多の言及

【釈迦】より

… 釈迦の教勢が盛んになるにつれ,法敵も増えた。彼の従弟とされ,のちに彼に離反するデーバダッタDevadatta(提婆達多)からは狂象をけしかけられ,祇園精舎ではバラモンたちから女性と密通しているとの虚偽の告発がなされた。実際,釈迦の教えはバラモン教の階級制度や祭式至上主義を脅かすものであった。…

※「提婆達多」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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