揚巻(読み)アゲマキ

デジタル大辞泉 「揚巻」の意味・読み・例文・類語

あげ‐まき【揚巻/総角】


古代の少年の髪の結い方の一。髪を左右に分け、両耳の上に巻いて輪を作る。角髪つのがみ
揚巻結び」の略。
よろいの背の逆板さかいたに打ちつけた環に通して揚巻結びをした飾りひも。
歌舞伎で、傾城けいせいに扮する女形おやまが用いるかつら。揚巻結びの飾りの房を背面につけた立兵庫たてひょうごのかつら。
女性の束髪の一。明治18年(1885)ごろから中年以上に流行した。西洋揚巻。
アゲマキガイ別名
(総角)
源氏物語第47巻の巻名。薫大将、24歳。薫の求愛を拒み、匂宮と結ばれた中の君の将来を案じつつ病死する大君おおいぎみを描く。
神楽歌の一。小前張こさいばりの歌に属する。
催馬楽さいばらの一。奔放な愛の歌。

あげまき【揚巻】

歌舞伎舞踊長唄助六主人公とした五変化舞踊「助六姿裏梅すけろくすがたのうらうめ」の通称。安政4年(1857)江戸中村座初演
歌舞伎助六物で、助六の愛人となる遊女

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改訂新版 世界大百科事典 「揚巻」の意味・わかりやすい解説

揚巻/総角 (あげまき)

江戸時代の遊女の名。(1)京島原丹波屋の遊女。宝永年間(1704-11)以前,万屋助六という男となじみ心中したとも,助六の仇を討ってのち薙髪し尼となったとも伝えるがさだかでない。1706年(宝永3)11月,京の早雲座《助六心中紙子姿》,大坂の片岡仁左衛門座《京助六心中》で同時に舞台化され,09年ころに一中節《万屋助六道行》,また義太夫節《千日寺心中》が上演された。(2)江戸吉原三浦屋の遊女。この揚巻には3代ほどあるといわれ(《世事百談》),上方の総角助六に付会して,13年(正徳3)以来江戸に移入され(《花館愛護桜(はなやかたあいごのさくら)》),江戸遊女の張りと意気地を代表する歌舞伎十八番《助六》劇のヒロインとなった。
助六
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朝日日本歴史人物事典 「揚巻」の解説

揚巻

歌舞伎十八番「助六由縁江戸桜」のヒロイン。新吉原三浦屋抱えの遊女。相手役の助六は江戸浅草花川戸の侠客,実は曾我五郎時致という設定。このふたりの名前の初出は宝永3(1706)年11月京都で上演された「助六心中紙子姿」,大坂の「京助六心中」。さらに同6年初代都太夫一中の代表曲「助六道行」,竹本座の「千日寺心中」によって一躍有名になった。一説には実際の心中事件によるという。これを江戸の2代目市川団十郎が正徳3(1713)年江戸山村座「花館愛護桜」で江戸の人間として上演。「張りと意気地」の吉原女性の典型である揚巻と江戸ツ子の見本のような助六という人物像が成立した。<参考文献>戸板康二『歌舞伎十八番』

(渡辺保)

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「揚巻」の解説

揚巻
〔長唄〕
あげまき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
桜田治助(3代)
演者
杵屋六左衛門(10代)
初演
安政4.3(江戸・中村座)

揚巻
(通称)
あげまき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
助六由縁江戸桜 など
初演
享保18.1(江戸・市村座)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「揚巻」の解説

揚巻 (アゲマキ)

動物。マテガイ科の貝

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世界大百科事典(旧版)内の揚巻の言及

【助六】より

…(1)万屋助六 元和年中(1615‐24)の京の俠客と伝える(《事実文編》)がさだかでない。宝永年間(1704‐11)に横死,また島原の遊女総角(あげまき)と心中したという。1706年(宝永3)11月,京・早雲座《助六心中紙子姿》,大坂・片岡仁左衛門座《京助六心中》で同時に舞台化され,1709年ころに一中節《万屋助六道行》,また義太夫節《千日寺心中》が上演された。さらに義太夫節《万屋助六二代(かみこ)》(1735),《紙子仕立両面鑑》(1768)が成立,上方系心中狂言の主人公として定着し,〈助六心中物〉の系譜をつくった。…

【助六由縁江戸桜】より

…歌舞伎狂言。世話物。1幕。通称《助六》。歌舞伎十八番の一つで3時間近く(現行1時間半から2時間)を要する華やかな大曲。1713年(正徳3),江戸山村座上演の《花館愛護桜(はなやかたあいごのさくら)》で2世市川団十郎が助六に扮したのが初演とされる。これ以前上方では助六と揚巻を脚色した歌舞伎や浄瑠璃が上演されており,江戸へ移されての初演である。16年(享保1),2世団十郎が2度目の助六を演じたとき,助六が曾我五郎と結びついた。…

※「揚巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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