撥音便(読み)ハツオンビン

デジタル大辞泉 「撥音便」の意味・読み・例文・類語

はつ‐おんびん【×撥音便】

音便の一。主に活用語連用形語尾の「に」「み」「び」が「て」「た」「たり」などの語に連なるとき、撥音「ん」となること。「死んで(←死にて)」「読んだ(←読みた)」「学んだり(←学びたり)」の類。広義には、名詞語中に見られる現象についてもいう。「簪(かみさし→かんざし)」「残んの雪(のこりのゆき→のこんのゆき)」の類。→イ音便ウ音便促音便
[類語]音便イ音便ウ音便促音便

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精選版 日本国語大辞典 「撥音便」の意味・読み・例文・類語

はつ‐おんびん【撥音便】

〘名〙 音便の一種発音便宜のために、語中・語尾の「に」「ひ」「び」「ふ」「へ」「み」「も」「り」「る」などの音節が、撥音に転ずること。その発生は、平安朝初期まで溯(さかのぼ)り得るといわれる。文語では、「て」「たり」に続く時のバ行マ行四段活用・ナ行変格活用の語尾、「めり・なり(いわゆる伝聞推定助動詞)」に続く時のラ変型活用の語尾がこの形をとることが多い。「むせびて→むせんで」「摘みて→摘んで」「死にて→死んで」「あるめり→あんめり」「あるなり→あんなり」の類。なお、口語では、バ行マ行ナ行五段活用の動詞が「て」「た」に続く場合、常に撥音便の語尾となる。〔日本俗語文典(1901)〕

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百科事典マイペディア 「撥音便」の意味・わかりやすい解説

撥音便【はつおんびん】

音便

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世界大百科事典(旧版)内の撥音便の言及

【音便】より

…たとえば,〈つきたち〉が〈ついたち〉,〈かみかき〉が〈かうがい〉,〈をみな〉が〈をんな〉あるいは〈取りて〉が〈取って〉となるような音変化を総括して音便という。音便は,それ自体は音変化であるが,変化の結果が文法現象として固定した音便形になっており,今日では,顕著に認められる。なお,音便の一つの特徴は,歴史的かなづかいにおいても,表音的にこれを書くことである。音便にはつぎの4種類がある。(1)イ音便,(2)ウ音便,(3)はね音便(撥(はつ)音便),(4)つめ音便(促音便)。…

※「撥音便」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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